[会長ブログ ― ネコの目]
闘い

将棋の最多連勝記録を29まで伸ばした中学生棋士の藤井四段が、NHK杯トーナメント第2回戦で、大先輩にあたる森内九段に勝利しました。(将棋NHK杯 藤井四段が森内九段に勝利 2017.9.3NHKニュースウェブ)

私は、1クラス40名の少人数だった医学部学生時代、相手を探す仲間から誘われたことで、将棋も碁も麻雀も花札も少し嗜みましたので、駒の動かし方程度は知っています。あまりにも前評判が高い生放送対戦だったので、拝見しました。が、永世名人でもある森内九段が投了されるところは、当然、??でした。

大物藤井四段は、まだ、中学生、一見シャイにみえますが、百戦錬磨の名人たちを相手に戦い、勝利をおさめられるのは、ヤワなことではありますまい。が、闘い前後の挨拶では、私が拝見する限り、いつも相手より深く、一瞬長く頭を下げておられるように見えます。古い感覚かもしれませんが、先輩への敬意を示しておられる、尊敬すべき闘士とお見受けしています。

間もなく30年ですが、パキスタンとアフガニスタンの国境地帯での難民支援に従事したことがあります。シルクロードの旅籠<ハタゴ>街ペシャワールの人口は50万とも100万ともいわれていましたが、それにまさる隣国アフガニスタンからの難民が街の周辺に滞留していました。それぞれの難民キャンプは、もう10年来、地域に根差した村落状で、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)が支援などを管理していましたものの、実情は、それぞれの集団を統括する武力権力者の意向で左右されることが普通にありました。

予防接種対策調査に訪れたある難民キャンプのことでした。事務所前で、聞き取りを始めようとしていたら、一台のピックアップトラックが帰ってきました。荷台には、カラシニコフ銃を手にした男たちが満載されていました。車が止まると、ひとりの少年がひらりと荷台から下りました。事務所前にいた、白い長い髭オヤジが、小走りに駆け寄り、その少年の銃を受け取りました。少年は、事務所横の縄を編んだ床几に腰かけ、も一人の白い髭のオヤジが、プラスティックのたらいを運んできました。僅かばかりの水が入っており、オヤジが少年の足を洗いました。

TVドラマ・・・若き日の信長が爺ヤに足を洗ってもらう・・・シーンでしょうか。

「あれは誰?」と私は、事務所の人に尋ねました。
「あれは・・・」「私たちのリーダーです。」

その少年は銃の扱いに長けていて、弾を無駄にすることはない・・・つまり、彼が撃てば、必ず、敵を殺<アヤ>めるというのです。言葉もありませんでした。どう見ても、わが国なら中学生・・・でした。

隣国ともいえる地域では、6回目の、今までにない規模の核実験が行われました。(緊迫 北朝鮮情勢 2017.9.4NHKニュースウェブ)
先日のJ-アラートに続き、この国からの脅威は、実態を伴って拡大しています。

が、武力闘争は、どちらの側にも勝利をもたらしません。

私が従事したアフガニスタン難民救援は、1970年代末の旧ソビエトの武力侵攻に続く国家崩壊の一端でした。それから30年、かの国は、まだ、安定には程遠い状態です。一部の権力者が意図する、国民を犠牲にしての武力闘争からは、何ももたらされるものはありません。

一対一のたった、縦36.4cm(一尺二寸)、横33.3cm(一尺一寸)の盤上の闘いの崇高さこそ、文化と呼ぶにふさわしいと思いました。世界の平和・・・などというと、何か色がついたり、また、少し、面はゆい思いも無きにしも非ずですが、武器に武器でない、対決の方法・・・ないものでしょうか?