公益財団法人笹川記念保健協力財団
English
文字サイズ文字を大きくする文字を小さくする

WHO Goodwill Ambassador's Newsletter For The Elimination Of Leprosy

制圧大使メッセージ:エリミネーション・トラウマ

 12月5日から7日の3日間、デリーにおいてNational Leprosy Conference が開催された。私も基調講演者として参加したが、この会議は今までにない画期的な会議だったと言える。会議は、保健省のDDGであるAnil Kumar博士を組織委員長において、計画され実施された。いままでの専門別の人のみが集まる会議と異なり、今回は、Nothing for us, without usを基調とする回復者のセッションから始まり、現場で患者発見にあたるヴォランティア女性、地方政府の公衆衛生担当者、病院の医師、大学教授なども含む実に多様な専門家、活動家の集まりであった。

 この会議を実現に導いた保健省のAnil Kumar博士のイニシアチブもあり、インドでは2016年から2017年にかけてLCDCと呼ばれる集中的な隠れた患者を発見する活動が保健省の主導で行われた。その結果、3万人以上の新規患者が発見され、2016年12月時点での新規患者発見数は13万人を超えて、これまでの12万人台を上回る結果となった。

 私は、これまでにこの欄でも何度か「elimination trauma」を問題にしてきた。一度公衆衛生上の問題としてのハンセン病の制圧、すなわち1万人の人口に患者1人以下の状況を達成すると、関係者は安堵をすると同時に、この数字が増えることを大変に恐れる傾向が強くある。新しい患者をできる限り多く発見して治療を施すのは医療関係者の崇高な使命なのだが、これまで数年間のインドを初めとする各国の新規患者数はずっと横ばい状態が続いた。これは、制圧国から未制圧国への転落は、当該国の保健省や関係者の恥と考えられていたからである。それをインドは2016年に打ち破ったのである。

 何度も言ってきたことだが患者数が増えることは各国保健省にとって、恥でもなんでもない。むしろこれを高く評価しなければならない。インド政府は2030年、患者ゼロを目指して野心的なチャレンジを開始した。100マイルの道のりは99マイルを半ばとすると私は言い続けてきた。各国におかれてもインドをモデルに、ハンセン病ゼロを目指す野心的なプログラムの形成を強く望みたい。

WHOハンセン病制圧大使 笹川陽平