公益財団法人笹川記念保健協力財団
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WHO Goodwill Ambassador's Newsletter For The Elimination Of Leprosy

制圧大使メッセージ:指導者の無知な発言

 私がWHOハンセン病制圧大使として活動するようになってから16年が経過した。その間、私は影響力のある指導者やメディア、映画などが、ハンセン病を何かの悪いことへの喩えとして使っているのを幾度となく目と耳にし、その都度抗議の書簡を呈した。彼らはハンセン病を「恐ろしいもの」、「不治の病」、そして「汚らわしいもの」と連想させる表現をしている。ハンセン病がごく普通に治癒できる病気であるにもかかわらず、このような心ない発言をする人が世界の指導者の中にも存在することは、誠に残念なことである。

  フランスのマクロン大統領は6月に「ナショナリストは、ハンセン病のようなものだ」と発言したが、10月末にも『ハンセン病的ナショナリスト』と発言した。加えて、今年はバングラデシュの海運大臣やポルトガルの総理大臣も政敵を批判する際にハンセン病を悪い喩えにする発言をしていた。私は、可能な限り書簡を呈してこのような発言者に注意を喚起するように心がけている。

 フランシスコ・ローマ教皇にもこれまでに数回彼が教会の組織的悪弊を非難する際にハンセン病のイメージを悪い例えとして使ったことについても訂正されるよう書簡を呈したし、また、北京オリンピックの際にはハンセン病患者の入国が拒否されていたため、国際オリンピック委員会や中国政府に撤回を要請し、実現した。さらにハンセン病にひどく歪んだ光をあてて描写しているシーンがあるアニメーション映画の製作会社にも抗議の上、訂正してもらった。

 最近は南米からアメリカに向かう「移民のキャラバン」について、米国テレビのニュース解説者たちが、このキャラバンによってハンセン病を含めた感染症が持ち込まれ流行する脅威があると恐怖心をあおっていた。

 恐れ、誤報、無知は深刻な反響を及ぼす。特に影響力のある人たちには言葉を選んで発言してもらいたい。読者の皆様も、このようなハンセン病が何か悪いことへの喩えとして使われている事例に接したら、直に抗議のレターを出してほしい。そして、国連の2010年12月の総会で「ハンセン病の患者・回復者とその家族への差別 撤廃決議」が採択されていることも書き加えてほしい。

  皆さん1人1人の努力の積み重ねが、長い時間がかかっても根深いハンセン病の問題解決への一歩になることを確信してほしい。このような発言を放置せず、我々がハンセン病についての誤った認識を正すために行動することで、問題解決に少しでも向かっていくことを期待する。

WHOハンセン病制圧大使 笹川陽平