[会長ブログ ― ネコの目]
マララ・ユスフザイさんの国連演説

女性の自立を是としないイスラム武力勢力批判ブログを書いていたパキスタンの14歳の少女マララ・ユスフザイが、学校の帰り、頭部を狙撃されたのは昨年10月でした。一時、意識不明に陥りながら、奇跡的に回復し、イギリスでの通学を再開したマララは、16歳になる7月12日、国連本部で、世界各国500名の若者を前に演説しました(2013.7.13各新聞)。
「・・私たちの、読み書きができないこと、貧困、そしてテロに対する壮麗な戦いぶりをご覧ください。私たちは、最強の武器として、本とペンを取ります。ひとりのこども、一人の教師、一冊の本、そして一本のペンが世界を変えるのです。教育こそが唯一の解決策です。まず、教育なのです。(So let us wage a glorious struggle against illiteracy, poverty and terrorism, let us pick up our books and our pens, they are the most powerful weapons. One child, one teacher, one book and one pen can change the world. Education is the only solution. Education first.) 」とのスピーチを、私も動画でみました。

http://www.independent.co.uk/news/world/asia/the-full-text-malala-yousafzai-delivers-defiant-riposte-to-taliban-militants-with-speech-to-the-un-general-assembly-8706606.html

たった14歳で、かのイスラム武力勢力に立ち向かったマララのことは、先年来、メディアを通じて知っていました、そして、彼女の狙撃は、20年以上も前にめぐり会った沢山のアフガンの、そしてパキスタンの同じように就学を阻まれていた少女たちと、執拗な女性への妨害を思いださせていました。古い話ですが、今は消滅したソビエト連邦の10年にわたる軍事侵攻が終わることになった1980年代末、アフガニスタン復興を目指した国連の壮大な支援の一環として、数百万の難民が滞留していたパキスタンのペシャワールに新設されたユニセフアフガン事務所に勤務しました。当時もイスラム原理主義やタリバン(そもそもの意味はイスラム学生集団)はあったものの、まだ、後のアル・カイーダは創設される前でした。女性開発、女性への教育支援を受け入れない風潮は強く、女性の健康や妊婦産婦保護ですら攻撃の対象でした。当時、ユニセフで、予防接種と母子保健担当を務めたのですが、開明派のアフガン人医師たちがひとりふたりと暗殺され、私自身も取るに足りない粗末な妊婦健診所開設計画を立てた後、毎夕、”I kill you!”との電話攻勢を受けたこともありました。
何ほどのことも出来ないまま、アフガン関連事業から抜けてしまった自分に、いつも忸怩たる思いを抱きながら、時に、彼らの中にいた利発な少女たちを想い出してきました。もし、あの少女たちが日本に生まれていたら・・・と思います。喜々として文字を覚え、沢山の本を読み、そして自分の道を切り開いていただろうに・・・と。私たちは、生まれる場所も国も時代も選べません。が、何処に生まれるかによって、大きな不公平を押しつけられている人々がいるのです。
そしてその結果、世界では、まだ、8億人弱の人々が読み書きできないとされています。殊に女性の識字率の低さは、子ども、家族そして女性自身の健康と密接に関連しています。
マララが襲撃された後、世界中がパキスタンのタリバン運動を非難しました。また、先般、乳がんと卵巣がん発症関係遺伝子“BRCA1”を持っているとして、乳房切除手術受けたアメリカのスーパースター アンジェリーナ・ジョリーを含め、多くの人々からの寄付もありました。回復したマララの、一層毅然とした演説に、彼女がノーベル平和賞の候補に挙がっていることも納得です。が、襲撃派は執拗です。彼女が今後も無事に活動し続けられることこそ、最も重要な進歩ではないでしょうか。それにしても、世界の半分(実際は、半分より少し多く)は女性です。その能力を活用して、社会を発展させ、皆が幸せになることを望まない愚かな勢力をどうすれば一掃できるのでしょうか。
笹川財団は、十数年にわたり、看護師の能力強化を図ってまいりました。現在は、国内専門家が対象であり、その国際化を意図しているわけではありません。しかし、いわゆる開発途上国の保健人材の質的量的不足が著しいことを考えると、マララに続く多くの若い女性に基礎教育が行き渡り、さらに適切な訓練を受け、健康医療分野の専門家になって欲しいと思います。身近な専門職としての看護職は、女性の自立とともに地域や国家の保健サービスの改善と、地域の安心につながります。私どもの能力の中で何が可能か、考えてまいります。良いお知恵があればご教示下さい。
2013.07.16 喜多悦子