[会長ブログ ― ネコの目]
紛争と子どもの健康

3年あまりの(国)内戦(争)状態が続いているシリアで、15年振りにポリオが発生したそうです。2014年3月21日号の科学雑誌サイエンス(Science 21 March 2014 Vol. 343 no. 6177 pp. 1302-1305 DOI: 10.1126/science.343.6177.1302)に“A War within a War(戦争の中のもひとつの戦争)”という記事が出ています。
著者Leslie Robertsは、いったんポリオがなくなった地に、新たな患者が発生するのは保健制度が崩壊しているしるしではないか(実際には、そうだ!とおっしゃっているのですが)、そして国中に紛争がひろがって、何百万人もの子どもたちは予防接種を受けられていないため、感染症という、もう一つの戦いが起こったのだと指摘しています。シリアでは、WHOが中東地区始まって以来という大掛かりなポリオ対策作戦を始めたそうですが、著者は、あらゆる人道的な支援から遮断されているような子どもたちを、一体どうやって見つけだすのかと述べています。
ユネスコ憲章の前文に、「That since wars begin in the minds of men, it is in the minds of men that the defenses of peace must be constructed(戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない)」とあります。実際に治安不穏な地域では、この言葉の重要性を毎日のように実感しました。しかし、本来は国民を保護するのが仕事であるべき国家元首が国民を搾取し、しいたげ、命を奪っていた・・・それがシリアでした。
もうひとつは、医学誌LancetのSyria: 3 years of sufferingという短い記事です。
これも内容は同じようなものですが、550万人のシリアの子どもたちにとって、適切な保健医療サービスも予防接種もないこと以上に、紛争状態という異様な環境下に生きていること、つまり将来や明日ではなく、今日の生存を心配しなければならないような状況は、ダイナミックに成長するのがあたりまえの子どもたちにどんな影響を与えるかと懸念しています。かつて、手探りで、アフガン難民キャンプでの保健活動に従事してから四半世紀も経ったというのに、世界はそれほど安定に向かってはいないように思います。残念です。
看護教育に従事するようになって、ナイチンゲールの業績とともになじんだクリミア半島ですが、ここにもウクライナから切り離されロシア領編入が、住民投票があったとはいえ、大国の意思のもとに一方的に宣言されました。つい先頃のオリンピックはなんだったのでしょうか、民族融和の風はどこへ行ったのでしょうか。一触即発的状況にさらされだしたこの地が、war(紛争)の場とならないこと、その中で、保健医療をまもる闘い(war)がうまく機能し続けてほしいと切に願います。
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