[会長ブログ ― ネコの目]
ふたつの感染症 ハンセン病とエボラ出血熱

2014年2月下旬、西アフリカのギニア国の地方で、下痢やおう吐を伴う不明熱がはじまり、新しいウイルス疾患との情報が流れました。これがそうだったかは判りませんが、3月21日、同国初のエボラ出血熱発生が報じられました。その後10日ほどの間に、はるかに離れた首都コナクリに波及したほか、隣国シエラレオネとリベリアにも広がりました。4月1日には、129名が感染もしくは疑い、84名が亡くなっています。ひとつの病気が広がっている場合、その患者の中でどれ位の死者が出るかという致死率は65%、つまり10人の患者なら、6人か7人が亡くなるという高さです。
最近では、エボラウイルス疾患(Ebola Virus Disease, EVD)とよばれる、この病気の原因はウイルスですが、発生地での広範な調査で、自然宿主(病原体を持っているが発病はしない)らしい何種かの動物が報告されましたが、まだ、確定的ではありません。つまり、ウイルスは、何処に潜んでいて、どうして突然人感染するのか、はっきりしていません。が、人感染すると、激烈な出血症状を来たし、多数者、時には90%の方が亡くなります。確定的ではありませんが、感染は、家族など身近な人々や治療に当たる医療者、そして犠牲者の葬儀の場で、出血死した遺体に触れることを通じ広がっていることから、恐らくは接触感染は否定できません。高い感染率、おそらく100%の発症率、そして効果的な治療法がないこと、高い致死率を示すこの病気は、1976年、アフリカのザイール(現コンゴ民主共和国)でアウトブレークした後、これまでに数カ国で10回の流行があります。最初の流行時、その対策に関わったザイールのムエンベ博士は、「感染経路が不明で、医療者にも、感染リスクが高い」と伝えてくれました。
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致死的な経過は約1、2週間の、この超急性型感染症に対し、私ども笹川記念保健協力財団が、40年の長きにわたって取り組んでいるハンセン病は正反対の特徴を持っています。
ハンセン病は、感染力も病原性、つまり発症させる力も、とても弱い細菌らい菌によって起こります。とても弱い細菌の特性上、何時、どこで、どの様に感染したかを明確にすることはほとんど不可能な上、感染しても発症することも極々稀なのです。その意味では、予防するために何をすればよいのか、対策はとても難しいとも申せます。しかも、発病後の経過もおよそ緩慢、何日という単位で症状が明らかに変化することはなく、去年と比べて・・・といった時間単位が必要です。そして、そもそも、この病気は致命的ではないのです。と、申せば、あんまり大した病気でないかのように聞こえますが、恐らく、地球上でもっとも長く、広く、そして深く人々を悩ませてきた疾患と申せましょう。
もし、どこかとても痛いとか、大出血しているなら、あなたは急いで病院に行くでしょう。ハンセン病は、原因菌が末梢神経を冒すと触覚や痛覚が麻痺します。怪我をしても痛くないのです。痛くないことが問題という、困った病気「でした。」と、過去形で書いたのは、数種の薬を服用することで、まったく症状を示さないまま治ることが当たり前になっているからです。しかし、世界では、まだ、きちんと診断されないまま、長らく放っておくことで、四肢や顔面に変形をきたしている方々、そしてその外観によって差別を受けている人々も少なからずおられます。私どもは、その状況を改善するための活動を続けています。
今、この瞬間にも、アフリカでは新たなエボラ出血熱という感染症が広がり、国際社会を挙げて対策が講じられています。それはそれで必要なことですが、その一方で、何千年も人類を悩ましてきた緩慢な感染症が生き残っている、この現状を何とかせねば、と改めて思った次第です。