[会長ブログ ― ネコの目]
戦火の三匹

久しぶりに本の感想です。

表紙にネコがいると無意識に本を手に取り、そして大概は買う、という下らない習慣を持っていますが、この本はインターネットで見つけました。第二次世界大戦が始まろうとするロンドンの仲良し一家に飼われている、仲良しの犬2匹とネコの話。

第二次世界大戦は、1939年9月1日、ナチスドイツのポーランド侵攻から始まります。この物語は、先の大戦、つまり20年前に終わったばかりの第一次世界大戦(1914-19)の名残さめやらぬロンドン、またもや防空壕掘りや毒ガスマスクの配布と不穏な様子が描かれます。戦争を心配しながら、それは避けられないと思っている大人、何だか不安なこども、そしてまだ何も知らないペットたち。

9月3日、ポーランドを侵攻したドイツに即時撤退を勧告する最後通牒を送ったイギリスのチェンバレン首相の開戦を告げるラジオ放送が物語の始まりでもあります。空港基地勤務の父、テムズ川に浮かぶ船上病院の看護師である母、間もなく遠方の祖母の家に疎開する兄と妹、その家族同様の犬とネコ、これらの人々とペットの長い、長い避難と再会の物語です。

出版社の解説には児童戦争小説とあります。確かに、戦時下勤務のために家を空ける両親と疎開のために遠くに送られる子どもの生活は戦争小説であり、あまり親切でない家に預けられたために脱走し、その内の一匹がかつて暮らした田舎を目指して放浪する3匹の動物の、逞しい避難行は児童小説でもありましょう。しかし、大大人<オオオトナ、なんて言葉はないでしょうが、十分年とった人という意味>の私にはとても面白く読めましたが、児童とよばれる世代では、ちょっと難しいのではないかと思いました。でも、途中で、茶色の縞ネコを可愛がり、遺言で自分の死後もネコの生活が安定するよう書き残した、かのウィンストン・チャーチルが出てきて、主人公のネコを可愛がったりするなど、歴史読み物としても面白いでした。

物語は、本当のような・・・しかし、小説ですからフィクションでしょうが、へぇぇ、1930年代のイギリスにはこんなことがあったのだと意外に思うことごともたくさんありました。例えば、戦場に出る飛行機とそのパイロットの安否を知らせるのが伝書鳩であり、一般にペットが盛んだったにもかかわらず、安楽死させられる動物の多さ、そして動物虐待もチョットびっくり。さらに驚いたのは、厳しい体罰を科する先生や子ども同士のいじめ、冷たいご夫婦の関係など、今、問題になっている諸事が、既にこの時代にも蔓延とは申しませんがあったらしいことです。そう申せば、第一次世界大戦で息子を亡くした、主人公の子どもたちのおばあちゃんの認知症らしき様子、それに反して、そのような人を支える善意の人々、時代が変わっても人間は変わらない、変われないのかもしれないのですね。

白いジャックラッセル犬(イギリス原産の小型狩猟犬、キツネ狩りなどに活躍、先日、あるペットショップで26万円を見ました!!)のバスター、ボーダーコリー犬(これもイギリス原産で、もっとも知能指数の高いとされる犬、牧羊犬は、大概この種類)のローズ、トラネコのタイガー(ネコに虎という名前!!)が、3匹一緒に苦難を越えて、地図上では400Km近い距離を異動する・・・そしてめでたしめでたしとなるのは、やはり小説でしょうか。

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「戦火の三匹: ロンドン大脱出」

ミーガン リクス著  尾高 薫訳

徳間書店

ISBN-10: 4198640505

ISBN-13: 978-4198640507