[会長ブログ ― ネコの目]
ネコの島田代島 日本のノラ猫その1

ネコの島、田代島を知ったのは、あの東北大震災/津波のあとでした。一度、訪ねてみたいと思いましたが、被災地にネコを見に行く、という気にはなりませんでした。

あれから5年5ヵ月。一昨年から、福島医大と福島県川内村、東京電力第二原発を学びの場として、同医大、長崎大学のご協力を得て、私どもが行っている1週間の学生対象放射線災害医療サマーセミナーを機会に、宮城県登米市の国立ハンセン病療養所東北新生園と、津波で壊滅した南三陸町(2011年8月、前職看護大学時代、学生ら80名とボランティアさせて頂いた)を表敬し、その帰路、週末を利用して、とうとう田代島に参りました。

石巻市の旧北上川の河口近く、遥か中空に弧を描いて河を超える日和大橋の少し上流に、ネコ人形のある船着場があります。そこから、東南約17Kmの島まで、200名程の定員の割合大きな船で40分、かつて南三陸金華山国定公園で、昨年3月からは、三陸復興公園となった田代島の南側の港仁斗田に着きます。

ネコ族は、本来群れずなつかずですが、さすがネコの島の主たちは、ネコの本性を失ったかのように、三々五々群れ、船着場あたりでも、外来訪問客の足元によって参ります。ネコ好きには、あまりの慣れ慣れしさに、ちょっと唖然としましたが。

石巻市のHPを見ますと、最大1千名を超えた住民数は、平成27年には82名、平均年齢は70歳を超えているそうです。国土交通省国土地理院データーでは、面積は3.14Km2ですから、人口密度は26人/Km2、平成26年度のわが国の人口密度の最大は、東京都豊島区の22,372人/Km2ですから、その1/860。いわゆる限界集落という言葉でくくられる多くの地方の実態の一つでしょうが、現実を見ると、言葉がありません。しかし、日本の地方自治体1741の人口密度は、ゼロつまり居住者がいなくなったところが4カ所のほか、100以下がすでに628カ所もあります。人口と高齢化・・・そして少子化の、深刻な実態を思えば、ネコどころではないのですね。

ちなみに、ネコは2百数十匹、いわゆる野良ではなく地域猫ですが、避妊はされておらず、おなかの大きなネコも見うけました。当面、ネコの未来はあるようで、彼らは、島の2カ所にあると聞いた餌場で食事をしているとか・・・・

あの大津波の際、波が島を飲み込んだ、などの報道もありましたが、最も高い山は海抜96mですから、それはない、と思いました。散策の途中、道を尋ねた男性やお目にかかった女性にうかがいますと、海に近い、わずかな平地部分は、島の両方向から繰り返し押し寄せる津波に呑み込まれ、130cmも沈下したそうですが、津波に襲われた面積は島の1/3程度だったとか。それよりも、立っておれない激しい揺れ(震度6)が延々と続いて恐ろしかったと・・・被災地でPTSDを誘発しそうな質問は禁忌ですが、そんな対話もさせて頂きました。

それにしても、観光客以外人影はなくネコばかり・・・彼らの将来もさることながら、人間のそれが気がかりでした。東北地方とは云いながら、黒潮の流れる三陸沖、濃い緑の大きな葉っぱの木々が茂っている地域もあり、何だか亜熱帯を思わせるようでした。うかがえば、寒暖差はわずかで、真冬でも零下にはならず、本当は住みやすいところだったのでしょう。上水は海底送水、し尿は石巻市へ移送、恐らく電気も海底で送電されているのでしょう、いわゆる生活インフラは石巻市本体との交流で保たれている。が、やはり、便利さには難あり、だから津波をきっかけに島を離れた人々がおられたのも納得せざるを得ません。あちこち、かつての村落繁栄の名残も目に付きましたが、いずれもチョット胸痛い想いがしました。例えば、猫神社を探して登りつめた頂上辺りには、1989(平成元)年に廃校となった石巻市立田代小学校が、その少し下には、今は使われていない消防機材庫がありました。目には出来ませんでしたが、かつては、その「山の上」に診療所があったが、今は、港近くのに週2回、先生がいらっしゃるとうかがいました。半日の出張診察だそうです。

さて、ネコさま。日本三大漁場のど真ん中、美味しい魚が採れる・・でネコ、ではなかったのです。
犬を飼うことは禁じられており、野生動物もいなければ、牛や馬もいない、この島に猫が蔓延った大きな理由は蚕です。その昔、この島では養蚕が行われ、ネズミからマユを護るためにネコが飼われたそうです。

そう云えば、周辺約11.5Kmの小島となめたわけではありませんが、緩やかな上り坂を登り切って探した、ネコ神社に行け付けなかったのですが、その道中に桑の大木がありました。が、もちろん、一大漁業拠点だった島に多数者が往来した頃には、大量の食糧とともに収穫物も保存されていたでしょう。そのネズミ当番もネコのお役目でありました。

過疎化した島の足である船は、外国人を含むネコ目当て観光客や釣りマニアのせいで、1日3便が保持されているそうですから、ネコがお役に立っているとも申せます。が、実際には、おいでではないネコアレルギーや猫嫌いの方には、我慢のできない島でもありましょう。とまれ、このような穏やかな、しずかな村落がじわじわと消えてゆくことをなんとかしないと、東京一極繁栄で、わが国が存続することはあり得ないと痛感しました。

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