[会長ブログ ― ネコの目]
感染症との闘い

先々週の週末から、中国に参っておりました。
まず、9月17日は広州市で、1996年にハンセン病回復者の支援のために設立されたHANDAの20周年記念式典でした。広東省は、1億を少し下回る人口を持つ中国随一の経済発展省、空港も道路も壮大です。ほとんど新車?と思うばかりのピカピカの車が疾走する高速道路は別として、都市部の渋滞はちょっとイライラ・・・わが国と似ています。

HANDAは、そもそもハンセン病回復者の社会的・経済的自立と尊厳ある生活を維持確立するために設立され、私どもは、その最初から支援しています。ハンセン病の問題は、どの国でも似たり寄ったり、つまり身体的健康にかかわる治療、すなわち医療分野だけでなく、精神的心理的健康を含む保健や、地域の人々との共存、連帯といった福祉社会分野での支援と充足が必要です。中国には、現在も、600を超える回復者村があるそうですが、HANDAの20周年にご参加の方々は、過去にも現在にもご苦労がおありとは思いますが、皆、活発で、明るく、良い声で歌い、つらい過去を物語る寸劇では、立派な演技ぶり、病気の陰なイメージが解消される気がしました。
HANDAを最初から管理しているマイケル・チャン医師という優れたリーダーの存在とともに、HANDAをも学習の場として、日中の学生キャンプを仕切っている日本人原田燎太郎氏によるJIAというNPOの活動も誇らしいことでした。

翌日からは、北京での第19回ILC (International Leprosy Congress 国際ハンセン病学会) です。これは、国際ハンセン病連盟 (ILA, International Leprosy Association) の学会活動でありますが、これまでは5年毎に、それぞれの国がILAと協力して開催してきましたが、今回は、前回2013年のベルギー後、3年で中国が開催したものです。その中国の意気込みでしょうか、開会式には、政府重鎮が並び、今をときめく習近平主席のメッセージが副主席により、やや、長々と読み上げられました。馴染んできた医学会とは、ちと、異なる趣でしたが、色々、学ぶところがありました。この概要は、別にホームページに出ることと思いますので、詳細は省きます。

たった3年余、ハンセン病対策の外野に関与しただけの私が申すべきではありませんが、人類史上、もっとも古いともいえる、極めて感染力の弱いらい菌という細菌が引き起こす、このハンセン病という疾患には、未だに多くの謎と云って不謹慎なら、未解決の問題・・・例えば、どのように感染するのか確定的ではないし、自然の中で、らい菌がどこでどう存在しているのか・・・・などをはらみながら、徐々に消えようとしていることにある種の感慨と焦りを禁じ得ませんでした。

ハンセンと云えば、数週前、アメリカカリフォルニア州の小学校で、二人の児童がハンセン病の疑いと報道されました。アメリカでは、愛玩動物として飼われることも多い、ある種のアルマジロからの感染が多いことは判っていましたが、ちょっとしたパニック状態も報じられたのは、ちょっとびっくりと同時に、まだ、アメリカですら、そんなことがと、ショックもありました。が、昨日、一人だけが検査陽性と判明しました。もちろん、きちんと服薬することで、病気が進行したり、後遺症を残したり、まして他人に感染することは皆無です。早い段階で、見つかったこと…その体制こそが重要であることを確信させる事態です。

そんな中、アフリカのナイジェリアでは、2年ぶりにポリオが発生したとの論文が出ています。ハンセン病は細菌による感染症ですが、ポリオは細菌よりもはるかにはるかに小さなウイルスの感染症です。記事では、色々な背景の紛争状態が、予防接種を困難にしているとのことで、このような子どもの感染症が、また、ぶり返すのだとも書いています。

アメリカやわが国のような、いわゆる先進国では、アフリカのような紛争はありません。が、それでも感染症は存在します。まして、予防接種もままならない国や地域での感染症対策は、本当に困難です。もう二昔も三昔も昔、アフガン難民キャンプで、苦労したEPI (Expanded Programme on Immunization, 予防接種拡大作戦)を懐かしく思うと同時に、過去数年の感染症発生・・・ずるずると続いているSARS (Severe Acute Respiratory Syndrome)とMERS(Middle East Respiratory Syndrome)、インフルエンザ、そしてアフリカ西部で猖獗 (ショウケツ)をきわめたエボラ、今も広がりつつあるZIKA熱・・・・人類の存在は、未だに微生物との闘いであることを実感させられた中国の旅でした。