[会長ブログ ― ネコの目]
秋の味覚

色々な国で短期長期の滞在を経験しましたが、日本ほど、四季が明確で、それぞれに折々の催しや食べ物がある国はないように思います。もちろん、どの国にも、暑いにつけ寒いにつけ、思い出はありますが。

例えば、「北京秋天」は、わが国洋画界の重鎮梅原龍三郎画伯が、1942(昭17)年に描かれた北京の秋空をテーマにした作品名ですが、その昔の北京の秋は本当に絢爛豪華でした。旧暦秋分の頃(9月20日過ぎ)、多分、一日か二日の間に、湿度がグンと下がったのではないかと思いますが、朝起きると少し冷気を含んだ透明さを感じる日、紫禁城(故宮。北京の中央にある490年の清朝の宮殿、現在は中華人民共和国の重点文物保護単位でありユネスコ世界遺産)の、黄色い瑠璃瓦(皇帝の色である黄色が釉薬でガラス状にコーティングされた特殊な瓦)がそれは鮮やかに映えて見え、同じ光景なのに、まったく異なる感じがしました。もちろん、周辺の木々も色づいてはいましたが、秋の北京、北京の秋・・・と云えば、燦々と輝く紫禁城の屋根を懐かしく思い出します。木々の色と申せば、それ以前、大昔になりますが、1970年代に住んだアメリカノースカロライナの大学街チャペルヒルの紅葉も見事でした。文字通り、燃えるような紅<クレナイ>の大木が広大な平原にポツンと立っていたり、あるいは延々何キロもまっ黄色の山が続いたり、豪快ではありましたが、ちょっと重苦しい感じもありました。

また、年間8ヵ月以上も40度が続くパキスタンの短い春は4月の2週間ほど、庭先のスイトピーが毎日20センチ以上も成長するのにギョッとしましたが、この短期間の春には、ジャカランダ(日本名キリモドキとも。紫の桜ともいう)が咲きだし、春!!という気がしました。ただし、この花はそれから延々半年も咲き続けます。短期間に咲いて散る桜に比し、ちょっと暑苦しい。

そして食べ物。紛争下のコンゴ民主共和国の辺境部での仕事の折、三日三晩、頑丈な鉄扉の宿舎に泊まりました。三度三度が全く同じメニューというか、それしかない。もちろん、頂けるだけでありがたいのでしたが、直径20センチほどの川魚のぶつ切りとジャガイモを薄いカレー味風スープで煮込んだものに、生暖かいコーラが続きますと、さすがに、臭いだけでおなかが一杯、紛争地で贅沢は禁忌ですが、「ゴメンンサイ、緊張していて、あまり食欲がないの」と、コックさんにお詫びしました。

で、例えば、春には菜の花や三つ葉、初夏には筍、夏には鮎や冷やっこにソーメン、秋には秋刀魚、松茸、冬には鍋料理などなど、季節によって、食材や料理が大幅に替わるのは日本だけのような気がします。もちろん、昨今、どんな食材でも、ほぼ通年入手できますが、旬<シュン>のものを頂くことのありがたさに麻痺していると思います。

まだ暑い日がぶり返していますが、朝夕、秋だなぁと思うこの頃、知人から松茸をご馳走になりました。広島産とか、茎がしっかりして、かさも固めのほやほやのマッタケ(大阪ではマツタケでなく・・・)でした。焼きマッタケ、松茸鍋、松茸入り雑炊、贅沢三昧させて頂きました。次は秋刀魚!!

2014年(平25年)12月4日、和食は日本人の伝統的な食文化としてユネスコ無形文化遺産に登録されています。皆さまも秋の味覚をご堪能ください。

20161024