[会長ブログ ― ネコの目]
新たな脅威 ニパウイルスと・・・・

今週の月曜日の産経ニュースにも出ていましたが、インドの最南部のケララ州で、コウモリが宿主(病原体を持っている生物)とみられるNipah Virus(ニパウイルス)感染が発生しています。ヒトへの感染は、コウモリからブタそしてヒトと考えらえていますが、コウモリからヒトもあるのでしょう。

最初、疑い例報告(発症は19日頃)があたったのは5月21日ですが、翌日には、州保健局がニパウイルス感染と発表し、必要な隔離手段を講じましたから、大きな広がりは防げています。はっきりした感染者数は不明ですが、6月6日には17人が亡くなり、90人が隔離され、18人の血液検査で12人に感染が証明されています。3人が亡くなったご一家の井戸から死んだコウモリが見つかり、ケアにあたった看護師が感染したらしいとか、油断は禁物です。

ニパウイルスは、1998年3月、マレーシアの養豚農家たちに発生した脳炎から確認されました。ニパというのは、最初の感染が起こった村の名前です。

症状は、発熱や頭痛ついでめまい、意識障害、けいれんなど脳炎症状で、死亡率が高いとされています。世界保健機関(WHO)やアメリカの疾病対策・予防センタ―(CDC)によると、多少の差はありますが、感染者の40~75%が亡くなると推定されています。最初のマレーシアでの流行では、300人が感染し100人が亡くなり(致死率33%)ました。そして、流行の広がりを遮断するため、100万頭の豚が殺処分(安楽死)されたそうです。

2001年にはバングラデシュとインドの北東部、シッキムに近いシリグリに発生、その後、大きな流行はありませんが、インドやバングラデシュでパラパラ発生しているそうです。

問題は、このような新興ウイルス感染を防止するワクチンがないことで、必然的に、感染防止は隔離と危険な生物や地域に近づかない、治療は対症療法(熱には解熱剤といった各症状に対する治療)で、(ウイルスを殺す)根本療法はありません。

ブタでは、呼吸器系症状が主体で、中程度から激しい咳を繰り返し、鼻水を垂らし、呼吸困難をきたす、時には、痙攣もあるそうです。【私どもは、ポークと呼び名を変えたブタサンは身近ですが、ピッグ(ブタ)はあまり見慣れない、まして、咳をしているブタは見たことがありません。ニパでは養豚家が、鳥インフルエンザでは養鶏家がご苦労されるのです・・・感謝しなければなりません。】ブタでニパウイルス感染が始まると、広範に広がるそうですが、人間と違って致死率(罹った中で死亡する個体の比率)は低いそうです。が、ヒトへの感染防止で殺処分される・・ブタサン、ごめんなさい。

もう一方の関係生物はコウモリです。わが国にも相当数存在するのですが、めったにお目にかかることはありません。コウモリ研究者が少ないから、実態が判らないとも云われていますが、このニパウイルスだけでなく、先般、再び三度の流行発生が起こっているアフリカ中央のコンゴ民主共和国のエボラウイルス病でも、その宿主はコウモリらしいとされていますし、確か、わが国では、愛玩動物としてのコウモリの輸入は禁じられています。

わが国では、2003年11月に改正された感染症法で、二パウイルス感染は、四類感染症(動物、飲食物などの物件を介してヒトに感染し、国民の健康に影響を与えるおそれがある感染症。媒介動物の輸入規制、消毒、物件の廃棄などの物的措置が必要)に分類され、診察した医師は直ちに届け出る体制になっています。

アフリカでは、まだ、コンゴ民主共和国のエボラ流行が収束していない中、東隣のウガンダで、同様の感染症が発生していると報じられています。あちこちでおこる感染症・・・との戦いは、未来永劫続くような気がします。

わが国でのキチンとした制度、生活環境、特に衛生状態の整備、維持といったことは、私どもには当たり前のようですが、そのことが実は、色々な感染症の広がりを防いでいます。そして、インドの、コンゴの、ウガンダの・・・感染症は、私たちと関係がないのではありません。アフリカからわが国への直行飛行機便はありませんが、インドは近い・・・どこかで感染して、症状が出る前に帰国する、あるいは訪日する人々はいずれ出るでしょう。

人体に潜り込んで、あるいは荷物に潜り込んだ生物にくっついた病原体(ウイルスや細菌、寄生虫)が、こっそりと国境を越えてくることは、十分、予測されます。侵入を防ぐことだけでなく、それらの病原体が存在する他の国の感染症対策も大事です。生活環境整備も他人事ではなく、出来る関与はすべきだ、情けは他人(ヒト)のためならず、と思っています。