[会長ブログ ― ネコの目]
年末おすすめ2冊の本

最近、著者からご恵贈頂いた2冊の本、ともに、判りやすい文章なので、簡単に読めるのですが、内容をキチンと読めたというには、ちょっと時間がかかりました。

 

1冊目の題名は『生きる。』です。が、その上に「息子とともに」があります。『息子とともに 生きる。』

 

息子とともに 生きる。

息子とともに
生きる。

私は、題名の「生きる」の後ろの「」に、著者本間りえ氏の、きっぱりとした決意を感じるとともに、その昔、駆け出しの小児科医だった頃の、色々な・・つらい思い出がフラッシュバックするのを抑えられませんでした。それに地震のあった日にお生まれになったご令息光太郎さん。ある日突然ではなく、時間をかけて本体をあらわしてきたのは副腎白質ジストロフィー(ADL)という難病でした。この病気、100年以上も前に最初の報告があったのですが、多くの難病がそうであるように、原因や治療法はなかなか見つかりませんでした。現在では、神経細胞の膜に作用するタンパク質のひとつが変性して、さまざまな症状を引き起こすこと、そしてそれは、生物学的な性を決めるX染色体の上にあるABCD1遺伝子の変化によること、うまく早期に診断がつけば、白血病の治療に使われる造血細胞移植(骨髄<人間の体の中で血液を作る臓器>や<若い血液細胞が豊富な>臍帯血の移植)が症状の進行を抑えることもあるなどが解っています。けれども、相当症状が進展してからでないと診断がつかず、つまり、ほとんどの罹患者は、それほど長くない年月の間に、ほぼ、寝たきりになります。

 

すくすくと育っていたのに、何やら様子がおかしい・・・と思った息子が難病だった・・・。

 

「難病の息子とともに生きる」ことを決められる前も、その後も、そして現在も、これからも様々な葛藤と悩みがあろうと拝察します。が、先般、私どもの「日本財団在宅看護センター起業家育成事業」5期研修生にお話し下さった著者本間りえ氏は、優雅な、さわやかなレディでした。そして、ご著書を拝読したあと、私のような年寄りにも、新たに「生きる」意味が生まれました。

本の後半は詩ですが、全編、流れるような文章です。是非、ご一読をお勧めします。

 

2冊目は、『穏やかな死 のために』です。著者は、『平穏死』という概念を提唱され、それに関連する著書を次々に発表されている石飛幸三氏です。かつて、ドクター石飛は、急性期医療の最たるものである血管外科のバリバリのエキスパートであられました。2010年の最初の「平穏死」本以来、先生が発信しつけておられるのは、高い専門性の難しい論文ではありません。

 

穏やかな死のために

穏やかな死
のために

この本も、本当は重い話題ですが、さわやかな読後感を得られます。こんな風に死にたいと思います。センセイの現在の職場は、芦花<ロカ>ホームという特別養護老人ホームです。かつての古典的なケアは、死に逝くヒトも、ケアをする人々も苦しめていた・・・、

 

僭越な言い方ですが、ドクター石飛は、職場の同僚である看護師、介護士、栄養士ら諸々のお仲間の意識変容を起こされたと思います。あるいは、お仲間が、先生の意識変容をもたらされたのかもしれません。そして、そのいずれにしても、ここで看取られた方々が、ケアを担う人々を導いたのでしょう。私たちは誰一人、死を免れません。避けられない死、それが確実になったら、「過剰すぎる」医療、ノルマを果たすためと云わんばかりに与え続けられる食べ物や水分は、経口であれ、胃ろうであれ、はたまた点滴であれ、まったくもって、余計なお節介であることを、繰り返し述べてあります。「説いてある」とは申しません。淡々と記載されている事実を、読む側がどう理解するかです。

 

三宅島では、水分だけを与えることが人々の穏やかで平穏な死につながっていることを、伝承されているのだそうです。それは医療が行き届いていないからではありません。私も学んだはずの、世界的な「ハリソン内科学」教科書に記載されている、過剰な医学介入をしないという死へのケアなのです。三宅島型看取りなのです。「人は食べないから死ぬのではなく、死ぬから食べない」と申しますが、その通りを、現在の、芦花ホームが普通になさっているのですね。

 

このことは、医療者側だけが知っていても実践できかねます。経験の有るの方もおいでかと思いますが、突然、現れた親戚が、「医者をよべぇ!!」とか、こんなに死にそうなのに、「なぜ、病院に連れて行かないのかぁ!!」とがなりたてること・・・つまり、周囲の家族も理解すべきなのです。題名が「穏やかな死」で行が変わり、「のために」が下についているのは、この本の読者に、「みなさまのためですよ!!」と呼びかけているように見えます。

 

本当は、重い話題ですが、ほんわかムードで、すらりと読み進められます。そして、皆さま、多分、私の最後はこのように、何もしないでね、・・・穏やかに逝きますよ!!という気になられると思います。3連休、そして年末年始のお休み、是非、2冊をお読み下さい。