[活動レポート ― ハンセン病]
ミャンマー初等中等教育

ミャンマーは、1998年にMDTを導入し、2003年に国レベルでハンセン病制圧目標(人口1万人当たり患者数が1人未満となること)を達成しました。しかし、ミャンマーは広い辺境地域と多くの少数民族を持つために、地域レベルでは、未達成の地域もあり、ハンセン病に伴う偏見・差別も根強く残っています。ハンセン病患者・回復者及びその家族は、そのような偏見・差別によりさまざまな困難・制約に直面しています。ハンセン病を親が患ったことから、貧困・偏見・差別により、その子どもたちが教育を受けられないこともあります。

このような状況を踏まえ、2017年4月から2018年3月までミャンマー国内14か所のハンセン病の回復者とその家族たちが住む村(コロニー)において、ハンセン病患者・回復者の子供たちの教育状況改善のために、294人の子供たちへの教育支援をMAM(マム)(注1)を通じて行いました。具体的には、子どもたちの学費や制服代、文具費、昼食代を賄うための奨学金の付与です。294人のうち85人は小学生、154人は中学生、43人は高校生、12人は大学生でした。

教育支援を受けた子供たちが通う小学校にて

教育支援を受けた子供たちが通う小学校にて

この教育支援は、貧しいハンセン病患者・回復者が子どもたちを学校に通わせるきっかけとなり、子どもたちは定期的に学校に通えるようになりました。実際に支援をした村々では、例年15%程度の子供たちが学校を中途退学せざるをえなかったのですが、現在ではそれが5%となりました。

小学校で給食を食べている様子(給食は子供たちにとって貴重な栄養を得られると共に、学校へ行くモチベーションにもなる楽しい時間です。)

小学校で給食のスープを食べている様子(給食は子供たちにとって貴重な栄養を得られるとともに、楽しいひとときです。)

また、この教育支援によりこれらの村の子供たちの知識、態度、行動にも改善がみられ、教育支援を行った各地域において、ハンセン病回復者やその家族たちに対するイメージが向上したという波及効果もみられました。

 

注1:MAM(マム)は正式名をMyitta Arr Marn(ミャンマー語で「よりよい希望の力」)といい、2006年4月に元保健省職員が中心となってミャンマー初のハンセン病回復者のためのエンパワーメント・ワークショップが開催された際に、参加した回復者たちによって設立されたハンセン病回復者組織で、ハンセン病回復者の自立と尊厳の回復を目指して活動を続けています。ミャンマーにある14か所の全てのコロニーに支部(SUB-MAM)を立ち上げて、各地においてハンセン病患者や回復者に寄り添った支援を行っています。

[活動レポート ― ハンセン病]
バングラデシュ栄養教育

バングラデシュは、1998年に公衆衛生上の問題としてのハンセン病の制圧を達成しているものの、毎年約3,000人強の新たな患者が出ており、ハンセン病はいまもなお大きな問題となっています。また、同国における国民の栄養状態は悪く、全国の5歳以下の子どものうち36%が栄養失調です(1996年は60%)。低栄養はハンセン病の臨床症状に大きく影響するリスク要因であり、病気の感染・発症を防ぐためにも、バングラデシュにおいて国民の栄養状態を改善することは重要といえます。

 

このような背景の中、2017年7月よりバングラデシュ北部の古都ボグラ県のハンセン病定着村において、Lepra(レプラ)(注1)を通じてBogra District Federation(ボグラ地域連合)(注2)によって、ハンセン病回復者や障害者、特に女性や子供達のために活動を行っている自助グループのメンバーが、バランスのよい食事の重要性を学び、栄養がある食事を提供・摂取できるようになることを目的に栄養教育の事業を開始しました。

 

自助グループの勉強会に参加する女性たちとその子供達

自助グループの勉強会に参加する女性たちとその子供達

まず、12ある女性の自助グループの各リーダーたちが栄養教育を受けました。その後、そのリーダーたちが自助グループのメンバーに半年間で860回以上の栄養教育の勉強会を開きました。それには自助グループメンバーだけでなくその家族や近隣の人たちも含めて半年間で4,000人以上が参加しました。最終的には10,000人の人々が栄養教育を受ける見込みです。加えて、野菜栽培とその調理指導教室も半年間で60回開かれ、600人以上が参加しました。こちらも最終的には1000人が受講予定です。

 

この地域では以前は、わずか10%の女性だけが健康的な食事が摂れていたとされていましたが、このような栄養教育を多くの女性たちが受講することにより、自分自身や子供達の栄養について考えるようになり、健康的な食事が摂取できるようになりました。

 

自助グループの女性たちの調理指導教室の様子

自助グループの女性たちの調理指導教室の様子

前述した通り、栄養状態が悪いこととハンセン病に感染することには関連性があるとの研究結果が出ており、今回、栄養教育を学んだ母親たちによって、子供たちの栄養状態が良くなることで、将来的にハンセン病を発症するリスクを減らすことが可能となります。

 

注1:Lepra(レプラ)は、1924年より英国に本拠地をおいてハンセン病関連の活動をしている団体です。モザンビーク、アンゴラ、ブラジル、マラウィ、バングラデシュ、インドを中心に啓発活動、早期発見・治療活動、保健システムの改善等を行っています。

Lepraのホームページ https://www.lepra.org.uk

上記事業の紹介もHPでしています。https://www.lepra.org.uk/nutrition-education-project

 

注2:Bogra District Federation(ボグラ地域連合)はボグラ県を代表するハンセン病の回復者団体です。おおよそ1000人のメンバーで構成する自助グループのネットワークがあり、1か月に2回定期的に会合を持って参加者に新しいスキルを学ばせたり、問題を話し合ったりしています。

[活動レポート ― ハンセン病]
統合的な疾病対策促進活動 ― ハンセン病の症例分布調査 ―

世界にまだいくつか残っているハンセン病の蔓延地の多くは、保健医療へのアクセスが非常に困難な地にあります。そこで当財団では、ハンセン病対策を他の疾病対策と統合し、保健医療へのアクセス拡大を図る活動への支援を行いました。

 

ハンセン病の症例が今日なお多くみられるアジアやアフリカ諸国では、その他の顧みられない熱帯病(NTDs: Neglected Tropical Diseases)(注1)の問題も抱えており、その対策活動が進んでいます。そこで、ハンセン病の症例の地理的分布調査を行い、他のNTDsの症例分布と照らし合わせ、協働することができる地域を特定し、それらの疾病対策と統合したより効果的な保健医療サービスの提供制度を構築するための仕組みづくりが開始されました。この活動は、American Leprosy Mission(ALM:アメリカ救らい協会)(注2)が主導して、Accelerating Integrated Management (AIM:統合的疾病対策促進)(注3)チームが行っており、当財団はその初期段階であるハンセン病の症例の分布調査への支援を行いました。

現地状況調査のための保健職員による住民への聞き取り(リベリア)

現地状況調査のための保健職員による住民への聞き取り   (リベリア)

 

2018年初頭までに、カメルーン、ナイジェリア、モザンビーク、リベリア、ガーナ、ミャンマー、スリランカの7ヵ国で、各国保健省の合意と関係NGOの協力を取り付け、調査活動が実施されています。分布調査が完了したミャンマーでは、この情報を基に、他疾病と協働した患者発見活動や、ハンセン病予防薬のパイロット実施地の選定を行うなど、新しい取り組みを推進しています。また、ナイジェリアでは、完成した症例分布図の有効性を維持するために、最新の症例データを収集するためのシステム開発とその導入も進められています。これから、他の国々でも分布調査を完了させ、効果的な保健医療の提供を可能にするシステムの実現が期待されています。

 

ガーナ沿岸地域の感染症の症例分布(赤:ブルーリ潰瘍、黄:ハンセン病、青:象皮病)

ガーナ沿岸地域の感染症の症例分布(赤:ブルーリ潰瘍、黄:ハンセン病、青:象皮病)

注1:顧みられない熱帯病(NTDs: Neglected Tropical Diseases)とは、熱帯地域を中心に蔓延している寄生虫や細菌による感染症のことで、貧困層を中心に世界の約10億人が感染し、年間50万人が死亡していると言われています。これらの熱帯病は先進国でほとんど症例がないために、世界の3大感染症であるエイズ、結核、マラリアと比べて、これまで世界の関心を集めることがありませんでした。ハンセン病もこのNTDsの一つとなります。

 

 

注2: American Leprosy Mission(ALM:アメリカ救らい協会)は100年以上前から米国の南カロライナ州を本拠地に世界中でハンセン病患者や回復者のための支援活動を行っています。最近はコートジボワール、コンゴ共和国、インド、リベリア、ミャンマー、ネパール、フィリピン、コンゴ民主共和国の8か国において事業を展開しています。

American Leprosy Missionのホームページ https://www.leprosy.org/

 

注3:Accelerating Integrated Management(AIM:統合的疾病対策促進)事業はALMとロンドン大学公衆衛生学・熱帯医学大学院、ガーナ保健省との共同チームによって開始され、統合的な疾病対策促進活動を各国の保健省やNGO等と協力して進めています。

Accelerating Integrated Managementのホームページ http://aiminitiative.org/

[活動レポート ― ハンセン病]
ハンセン病定着村における環境改善 ミャンマーより

ミャンマー東部の国境付近に位置するシャン州は、独立を求める少数民族が多く暮らし、武装組織との戦闘が多発しており、政治的に不安定な地域です。またアクセスが困難なため医療システムも機能していない地域も多くみられます。ハンセン病の罹患率も高く、州内にはハンセン病定着村も複数ありますが、そこでの生活環境は厳しく、学校さえもありません。これらの状況を改善するために、シャン州の8つのハンセン病定着村において、水タンクの設置や小学校建設などの環境改善活動への支援が2017年に開始されました。この支援はThe Leprosy Mission(TLM:英国救らいミッション)ミャンマー事務所(注1)を通して、シャン州で30年以上もハンセン病関連の活動をしているChristian Leprosy Mission, Eastern Shan(CLEMES:東シャン州キリスト教救らいミッション)(注2)が実施しています。

これらの活動は、各々の村で住民主体が参加型で行うことによって、住民一人一人の自尊心や村への想いを高めるとともに、長年ハンセン病定着村として差別の対象とされてきた村が、周辺の住民たちによって差別されず、「ひとつの村」として認識されるようになることを目的に実施されています。

Le Po(ルポ)村では住民たちが衛生環境を向上するために、まず水タンク建設に協力しました。タンクの土台をつくるために、女性たちもセメント作りに積極的に参加し、一丸となり完成させました。そしてパイプをつなげて水路をつくり、水を村に運べるようになりました。上水道が整備されたことにより、衛生状態が改善し、さまざまな感染症の罹患率も下がることが期待されています。

また、この村は周囲から隔絶した場所にあるため、これまで住民の子どもたちは、学校に通うことができませんでしたが、来年までに小学校が建設されることになりました。ここでの小学校の建設は、これまで子どもたちに教育の機会を与えたいと願っていた親たち、又、将来の夢を描くことができなかった子どもたちにとって、大きな希望となっています。これから将来を担う子どもたちが、学ぶ喜びを得ることにより、いままでは考えられなかったような大きな夢を持つこともできるようになるでしょう。

ミャンマー環境改善

 水タンクをつくるために、セメント作りから住民が取り組みます。
その過程には、女性も積極的に参加し、住民全体の強いオーナーシップが芽生え、
よりよい管理体制も期待されます。

ミャンマー環境改善2

 学校建設予定地で、完成を心待ちにしている子どもたち。
校舎の支柱となる木材は、周辺の山々から木を伐採して村へ運んできました。

注1:The Leprosy Mission(TLM:英国救らいミッション)は、英国を本拠地に130年以上もハンセン病関連の活動を行っているキリスト教団体で、ミャンマーでは1898年より地元のキリスト教団体や病院と一緒に活動を行っています。現在、TLMはミャンマーではハンセン病と障がい者問題のリーダー的な存在です。主に保健サービスや公共の場へハンセン病患者や障がい者がアクセスしやすいようにしたり、偏見差別をなくし、ハンセン病患者や障がい者の社会参加を促したりする活動を行っています。
The Leprosy Missionのホームページ

注2:Christian Leprosy Mission, Eastern Shan(CLEMES:東シャン州キリスト教救らいミッション)は、シャン州の少数民族が多い地域でキリスト教会によって30年前からハンセン病や貧困と立ち向かうことを目的に活動が開始され、現在では医療アシスタント、患者の潰瘍の処置をはじめ、重力フロー給水、バイオサンドフィルター、衛生設備、小学校建設などの社会インフラにかかる活動も行っています。

[活動レポート ― ハンセン病]
ハンセン病定着村における環境改善 インドネシアより

学生などの青年がハンセン病定着村に数週間暮らしながら(キャンプ)、村の清掃活動や道路整備などの環境改善活動(ワーク)を行うことをワークキャンプと呼んでいます。住民である回復者と交流を重ねることを通じて、青年自身の心身の向上にもつながっていると、現地ならびに国内でも高い評価が寄せられています。

 

ワークキャンプ運営団体Leprosy Care Community(LCC)注1は、東ジャワ州ンガンゲット村で活動を行っています。インドネシアでは、ハンセン病患者や回復者、その家族への偏見・差別が、未だに根強く、深刻な問題となっているため、ハンセン病定着村におけるワークキャンプ活動は、インフラ整備による生活環境の改善だけでなく、村の中と外の一般社会をつなぐ架け橋にもなっています。

 

回復者の家族、特に子どもたちは、進学や就職などの理由により、村を出た後、戻らないことが多くあります。そのため、村には高齢者のみが残り、村の発展が期待できないという状況が多くの定着村に共通してみられます。ンガンゲット村も例外でなく、回復者の子どもたちは、村を「故郷」と考えず、都会へ出て働きたいという希望が多くありました。そこで、LCCは、村の住民と村の将来像を描くことから始めました。若者を中心とした集会を開き、清掃活動を行うと共に、村の中に湧いている温泉にも注目しました。温泉周辺の環境整備を行ったところ、村の外からの利用者が増えました。

温泉に続く道に手すりを付け、歩きやすくなりました

温泉に続く道に手すりを付け、歩きやすくなりました

 

建設した更衣室は、村の外からの利用者に好評です

建設した更衣室は、村の外からの利用者に好評です

そこで、2017年度は、温泉をより多くの人々が利用するようになるために、温泉へ続く道の舗装と更衣室の建設を行いました。その結果、ンガンゲット村がハンセン病定着村であることを気にせず温泉を利用する人が多くなり、温泉の駐車料金などの支払いを通じて、村の収入が増え、村の中でも働く機会を得られるようになりました。いま、若者たちは、温泉施設への注目を通して、村への「故郷」としての誇りが生まれ、自分たちの手で、村の将来をどうするか、考え始めています。今後のンガンゲット村の発展が大きく期待されます。

 

 

 

 

注1:

Leprosy Care Community (LCC) は、2010年の設立以来、年々活動範囲を拡げ現在では4か所でワークキャンプが実施されています。

http://www.lccui.com/

インドネシアでは2018年度に、こうした各地のワークキャンプをコーディネートする組織として「JALAN Indonesia Work Camp CoordinateCenter」が立ち上がりました。

 

[活動レポート ― ホスピス緩和ケア]
「高齢者に多い疾病と健康管理 認知症ケア」学習会のご案内

当財団では、ホスピス緩和ケア、終末期ケアおよび在宅医療等の必要性を、保健医療関係者から一般市民まで幅広い層を対象に周知啓発する活動、または地域における生活・療養・医療・介護・看取りを支えるための多職種間連携強化等に対する助成をおこなっています。今年度は、医師、看護師、介護福祉士など、18名が助成活動中です。

ご紹介する鈴木晶子さんは、地域の方々が自ら在宅医療や介護について考え、病気や障がいを持っても「自分の選んだこの町で暮らしていける」と思える機会を作る活動をしています。この度、活動のひとつとして、9月9日(日)に東京都足立区北千住で住み慣れた地域で健やかな老後を送るための学習会「「高齢者に多い疾病と健康管理 認知症ケア」が開催されます。どなたでもご参加いただけますので、関心のある方とお誘い合わせの上、ぜひご参加ください。

本会に関するお問い合わせ・お申し込みは

北千住訪問看護ステーション 電話03-3882-8386 FAX03-3882-8581

まで直接ご連絡ください。

無題

[活動レポート ― 在宅看護センター]
在宅の仲間―番外編

暑中お見舞い申し上げます。

この度の西日本豪雨禍で亡くなられた方に哀悼の意をささげますと共に、まだ行方のわからぬ方々とそのご家族や避難を余儀なくされている多くの方々に、心からお見舞い申しあげます。

先般の大阪の地震に続く広域大災害もあって、ホームページ連載中の「在宅の仲間たち」が足踏みしております。

言い訳がましいのですが、夏休み・・・させて頂きます。

2014年度から始まった笹川記念保健協力財団が実施する「日本財団在宅看護センター起業家育成事業」の2018年度は、猛暑の中、熱い研修の日々が続いています。この5期生17名を含めますと67名の仲間となります。

が、下の地図をご覧いただきますと、白抜きの、未だ仲間のいない地域も沢山あることは歴然です。各地域の人々に安心を保障できる看護師の拠点を、さらに増やしてまいりたいと思っていますが、開業済の仲間は、今次の災害でも応援体制を考えてくださっています。精神論は好みませんが、日々の緩やか連帯とともに、イザ!!の際の強固な在宅看護師魂をうれしく感じています。

皆様、猛暑の日々、ご自愛下さい。

日本財団在宅看護センター開業地図
日本財団在宅看護センター開業地図

[活動レポート ― 在宅看護センター]
シリーズ 日本財団在宅看護センター起業家育成事業の仲間たち8-近代化の歴史の町 田川で生まれた「むゆうげん」

事業所名:NPO法人 むゆうげん無題

日本財団在宅看護センター ホームホスピス「わこの家」

所在地:〒822-1406 福岡県田川郡香春町香春84-1

TEL/FAX:0947-32-7511

副理事長:原 享子 研修1期生

開業:2015年4月1日

HP: http://muyuugen.org/wako

 

「香春岳(かわらだけ)は異様な山である。けっして高い山ではないが、そのあたえる印象が異様なのだ。」

無題2五木寛之の「青春の門筑豊篇」の冒頭に出てくる田川郡糸田町にあるカラスオ峠から見た香春岳の描写です。

私たちNPO法人「むゆうげん」は、福岡県筑豊(ちくほう)の田川市で2015年4月1日に産声をあげました。筑豊の由来は、その昔の前国と前国の頭の字をとったものですが、「ちくほう」と聞くと、ある種感慨を覚える方は沢山いらっしゃると思います。

「むゆうげん」が事業展開している、その田川地域は、かつて国の基幹産業だった炭鉱で栄え、そして1960年代以降のエネルギー革命により衰退を余儀なくされました。人口減少と過疎化が進み、2017(平成29)年3月末現在の人口は約12万9千人、高齢化率は40%に限りなく近づいています。高齢化に加えて、炭鉱に代わる地場産業が乏しいこともあって、介護関係事業がかなり多いことも特徴かもしれません。訪問看護事業所も、実に26ヵ所のステーション、みなし指定の訪問看護も精神科病院を含めるとかなりの数にのぼります。

さて、私たちNPO法人の理事6人は、高校の同級生仲間。事務所探し、NPO法人設立登記、指定居宅サービス事業者申請、スタッフ募集等々、何もかも6人の新米理事たちにとっては初めての体験でした。数々の失敗談は語りつくせないほどあります。

2013年12月のことでした。ちょっとした興味から、私どもは、福岡県久留米市の「ホームホスピスたんがくの家」の見学に参りました。NPO法人「たんがく」の理事長樋口様の熱いご案内と説明に一同感動の極みでした。その理念はもちろん、そこに住まわれる方たちの明るいまなざし、日本家屋の佇まい、お庭、介護スタッフが醸し出す明るく優しい空気といった環境にも魅せられ、定年退職後にやるなら「これ!!」と、仲間全員が想いを一つにしたのでした。

樋口理事長の強い勧めもあり、翌年2月には、宮崎市のホームホスピス第一号「かあさんの家」にも伺い、理事長市原美穂様のご説明を聞き、ますます熱く感じるものがありました。

志高く設立を目指したNPO法人ですが、理事6人の中で保健医療従事者は私1人、訪問看護ステーション管理者の経験があるとは申せ、病院付きのぬくぬく環境での仕事であったこともあり、起業のノウハウなど全くの素人でした。

そんなときに飛び込んできた情報が「日本財団在宅看護センター起業家育成事業」だったのです。定年前に病院を早期退職し、しばらくは母には親孝行、夫や孫にも時間が作れるなどと考えていたのですが、神様は休む間を与えては下さいませんでした。

笹川記念保健協力財団現会長喜多悦子先生が企画された「看護師が社会を変える!」とのスローガンの下の「日本財団在宅看護センター起業家育成事業」の一期生になるべく、2014年6月、期待と不安をないまぜに上京しました。翌2015年1月までの8カ月間、第一線でご活躍のご高名な講師の方々による座学のほか、起業家としての心構えや行動学などなど、徹底的に学ぶことが出来ました。

これまで看護師、ケアマネジャーなどに携わってきた私ですが、ことがおカネのこととなると頭の中でシャッターがガラガラと大きな音をたてながら降りてきます。そんな私に「おカネに弱くってもあなたには仲間がいるでしょ、大丈夫だよ。」と励ましてくださった喜多先生の言葉が今でも蘇ります。

法人名「むゆうげん」には不思議な響きがあります。無限の友→無友限→むゆうげんと命名しましたが、ホームホスピスの理念でもある「とも暮らし」にも懸けられています。

共に働く仲間たちと

共に働く仲間たちと

2015年10月1日、多くの方々のご協力もあって法人最初の事業である「日本財団在宅看護センター訪問看護一会<いちえ>」を開所致しました。2人のスタッフも、私同様還暦前の熟年看護師、ゆっくり、じっくり在宅医療や介護保険について学びながら利用者ゼロ(0)人からのスタートでしたが、24時間365日、いつでも相談可、必要と判断すれば訪問も進んで行う、安心丁寧のケアを行うことを貫いてまいりました。

起業4期目の現在、常勤看護師5名、登録契約の非常勤看護師2名、PT2名、常勤事務職員1名と、やや大所帯に近づいています。ゆるゆるがモットーではないのですが、利用者数もかなり緩やかな曲線を描きながら、ようやく右肩上がりとなってきました。2018年4月のレセプト請求数は36名、うち医療保険20件、介護保険17件、訪問件数455件でした。

利用者様自身が自立した生活を過ごせるようになること、あるいは亡くなられたり施設に入所されたりなどで、訪問終了になった方々の転帰は様々ですが、折々に感謝の言葉を頂くと、老体に鞭打ちながらも「またがんばろっ!」と前を向いて進んでいくことができます。

田川地域は、介護施設の数も充足されており、人々は在宅介護より施設入所を選択できる事情から訪問看護も必然的に施設に赴くことが多くなっています。

無題5

わこの家入居者様とのお花見

当法人が運営している「ホームホスピスわこの家」もそのなかの一つであり、この「わこの家」を運営発展させていくことが、私たちの最大の目標でもあります。2018年4月で開所2周年を迎え、とも暮らしの住人の方々もようやく定員7人となり、満室状態です。2年の経過の中、まだ、看取り経験のないホームホスピスですが、実は、現在、まさにお看取りに向けてのおひとりとそのご家族に医師やケアマネなどとともに心のこもった対応を心掛けさせていただいているところです。(この原稿推敲中2018年5月25日、最初のお看取りをさせていただきました。)

これまで、入居者が3~4人という期間が続いたことで、介護職員への教育には時間を十分にかけられたのではないかと思っています。

苦手なおカネ、帳簿は赤色!ずっと赤・・・これは経営者にとって最大頭を悩ませる問題です。事実、スタッフのお給料が払えなくなるのでは・・・という恐怖で夜も眠れぬ日々を過ごしました。開所から度々襲う体の不調・・・おカネのことをよく判らないが故の不安は思っているより大きいのでしょう。

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お誕生日には大きなケーキで

それでも、1日は24時間、どんな出来事があろうと明日はやって来ます。新しい1日が始まると気分も一新されます。が、また、別の新しい課題をつきつけられる・・・この繰り返しが人生なのでしょう。しかし、最近は、どんな困難な課題にも神様は「ちょうどいい具合」に折り合いをつけてくださるものなのだと悟れるようにもなりました。

「日本財団在宅看護センター起業家育成事業」の、いわば卒業研究発表でしょうか、研修の最後の2015年1月に発表した「事業計画」に沿って、一つずつゆっくりではありますが、目標に近づけていることを実感する今日この頃です。

「日本財団在宅看護センター起業家育成事業」という研修受講が、私の人生の別の扉を開いてくれたと同時に、その後のあと押しや、また、多くの仲間たちの励まし、その全てが今の私の財産であり、私の中の核として誇りに思っているところでもあります。

2017年3月末までの6年間、福岡県看護協会職能Ⅱ委員としての経験や昨年受講の機会を得られた「エンド・オブ・ライフケア援助者養成基礎講座」での学びから、微力ながら地域貢献を目的として住民レベルでのディグニティセラピーやアドバンスケアプランニングの普及に向けてケアカフェの企画を計画しているところです。

今まさに苦しみの中にある利用者さまにとって、何が穏やかに過ごせる条件になり得るのか、「苦しみを分かってくれる人」としての私になれるよう、日々努めて参りたいと考えています。

地域のハブとなる在宅看護センターとして認められることを目標に「むゆうげん」は無限の友とともに邁進してまいります。これからも末永くご指導よろしくお願い申し上げます。

文責 原 享子

 

[活動レポート ― 在宅看護センター]
2018年度「日本財団在宅看護センター」起業家育成事業 開講式を開催しました

今年で5年目を迎える「日本財団在宅看護センター」起業家育成事業は、17名の受講者を迎え、6月11日に開講致しました。

開講式では、日本看護協会前会長/東京医療保健大学副学長の坂本すが氏、2期生で都内で開業し活躍中の在宅看護センター本郷(http://home-carenurse.com/) 代表の直江礼子氏より激励の言葉をいただきました。

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受講者代表の三浦比呂子さんからは「研修に参加した同じ志を持つ仲間と、様々な学習を通じてこれまでの経験を言語化し、普遍化するとともに、仲間として礼節を重んじ、絆を深め、助け合いながら切磋琢磨して、全員でより高い目標に向かって歩んでまいりたいと思います」と力強い決意表明が述べられました。

式の最後には、日本財団の笹川陽平会長より「これからの老人医療、終末期医療の在り方の革命家」 である受講者へ向けて、「目配り、気配り、心配り」を大切にするという経営者の心得が送られました。
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本事業の受講者は、2019年1月までの8ヶ月間、多方面で活躍される講師を迎えての講義の他、現場経験を養う為の実習、国際機関や企業の見学、学会参加、起業計画の立案を経て、全国での起業を目指します。
1~4期生の50名に加え、5期生17名の今後の活躍にご期待ください。
当日の模様は、日本財団ブログ ソーシャルイノベーション探訪にも掲載されております。あわせてご覧ください。

[活動レポート ― ホスピス緩和ケア]
「老化に伴うこころとからだの変化」学習会のご案内

当財団では、ホスピス緩和ケア、終末期ケアおよび在宅医療等の必要性を、保健医療関係者から一般市民まで幅広い層を対象に周知啓発する活動、または地域における生活・療養・医療・介護・看取りを支えるための多職種間連携強化等に対する助成をおこなっています。今年度は、医師、看護師、介護福祉士など、18名が助成活動中です。

ご紹介する鈴木晶子さんは、地域の方々が自ら在宅医療や介護について考え、病気や障がいを持っても「自分の選んだこの町で暮らしていける」と思える機会を作る活動をしています。この度、活動のひとつとして、6月2日(土)に東京都足立区北千住で学習会「老化に伴うこころとからだの変化」が開催されます。どなたでもご参加いただけますので、関心のある方とお誘い合わせの上、ぜひご参加ください。

本会に関するお問い合わせ・お申し込みは

北千住訪問看護ステーション 電話03-3882-8386 FAX03-3882-8581

まで直接ご連絡ください。

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