[活動レポート ― ハンセン病]
フィリピンでハンセン病回復者やその子女たちに対して職業技能習得支援を行っています。

フィリピンでは1906年のクリオン島ハンセン病療養所の開設に始まって全国に8国立ハンセン病療養所が設立されました。1998年にフィリピンは公衆衛生上の問題としてのハンセン病の制圧を達成しましたが、現在でも毎年2000人弱の新たな患者が出ています。一方でフィリピンでは教育は地域的なばらつきが大きく、平均として38%程度が小学校も卒業していません。各療養所に近い地域はさらに悪い状況で、特にムスリム・ミンダナオ自治区(スールー療養所付近)では6割が小学校も卒業していません。また、ミマロパ(クリオン療養所付近)、ビコール(ビコール療養所付近)、サンボアンガ(ミンダナオ中央療養所付近)、西ヴィサヤ(西ヴィサヤ療養所付近)、中央ヴィサヤ(エバースレイ・チャイルズ療養所付近)、ソクサージェン(コタバト療養所付近)でも小学校卒業以降に学校教育を受けていない人口が5割から6割強と、最終学歴が相対的に低くなっています。ましてや高等教育や職業技能の機会は地理的、金銭的に多くのハンセン病回復者やその子女には手に入れがたい状況になっています。

縫製業の訓練の様子

縫製業の訓練の様子

このような状況を踏まえて、当財団は、2017年9月から2019年3月までの1年半でフィリピン国内の療養所付近のコミュニティで暮らす回復者やその子女たちに対して、ハンセン病による偏見や貧困の連鎖を断ち切ることを目的に、一般社会で安定した職業につく手段としての高等教育や政府認定の資格がある職業技能の習得支援をフィリピンの各地域で活動しているハンセン病回復者団体とそれらを統括しているハンセン病当事者ネットワーク団体のCLAP(クラップ)を通して行うことにしました。

まだ足踏みミシンも現役で使われています

まだ足踏みミシンも現役で使われています

2017年9月から2018年8月は、訓練費のみならず、訓練に伴う交通費や諸経費を賄うための支援をマニラの2団体、西ヴィサヤの1団体、ミンダナオの1団体、コタバトの1団体を通して合計72名に1人当たりおおよそ日本円で5000円から2万円程度の奨学金が付与されました。これらの訓練生は、主に、紳士服仕立て業、婦人服仕立て業、高速縫製業、美容業、家事代行業、そして洗剤製造技能の訓練を行いました。
2018年9月から2019年3月にかけては、さらに80名程度のハンセン病回復者やその子女たちの支援を行う予定です。

洗剤製造技能養成講座受講者たち

洗剤製造技能養成講座受講者たち

[活動レポート ― ハンセン病]
中国雲南省のハンセン病回復者村の衛生環境が改善されました!

  雲南省の毛王洞(マオワンドン)村と螺線管村(ラオシャンガン)村は、1950年代にできたハンセン病定着村で、毛王洞村には老若男女21家族96名が住んでいます。一方で螺線管村には男性11名、女性9名の計20人しか住んでいないのですが、平均年齢は70才以上と高齢で半数の人は脚が不自由です。これらの村の村民が健康で安全に生活が出来るように、当財団は、中国のハンセン病回復者支援団体であるHANDA(ハンダ:広東省漢達康福協会)(注1)を通して、2017年後半から2018年前半にかけて衛生教育ならびに衛生環境整備等を行いました。

衛生教育を指導している様子

衛生教育を指導している様子

歯磨き指導を受けている様子

歯磨き指導を受けている様子

  まず、毛王洞村では主に女性と子供を対象に衛生教育が行われました。以前、この村では教育水準の低さから健康に関する意識が低く、特に女性たちは自分自身を清潔にする知識やシャワーを浴びて毎日して身体をきれいに保つという意識がないため、95%が婦人科の病気を持っていました。今回、多くの村民が衛生教育を受けることにより、意識が高くなり病気を防ぐことができるようになりました。また子供たちへの公衆衛生教育によって子供たちは将来的にも健康を維持することが可能となりました。
  次に、毛王洞村内の二つの集落をつなぐ道路の修復・舗装が行われました。道幅3メートル、長さ500メートルの道路を全21家族が助け合って修復、舗装しました。これまでは雨が降ると道がぬかるみ、人のみならず家畜さえも通行ができませんでしたが、現在は舗装され村の人々の安全が確保されるようになりました。

道路の工事前

道路の工事前

工事後

工事後

  さらに、毛王洞村にて、11の浴室設置工事が行われました。これまでこの村では浴室がある家はなく、薪を焚いてお湯を沸かし、そのお湯で身体を洗っていましたが、今回太陽光熱発電によりすぐに温水が出るようにソーラーパネル付きの浴室が設置されました。これにより村民はいつでもシャワーを浴びることが出来るようになり、身体を清潔に保てるようになりました。

新設された浴室とソーラーパネル

新設された浴室とソーラーパネル

  螺線管(ラオシャンガン)村では環境整備を行いました。螺線管村は高齢者が多いため、まず高齢者が安全に暮らせるようにいくつかの坂道やスロープに手すりを設置しました。また、皆が毎日顔を合わせて談笑できる場所を設置して、椅子とテーブルを置きました。

何もなくて滑り落ちそうな坂道

何もなくて滑り落ちそうな坂道

手すりがついた坂道

手すりがついた坂道

村民が集う場所が出来て互いを思いやるようになりました

村民が集う場所が出来て互いを思いやるようになりました

注1:
HANDA(Guangdong HANDA Rehabilitation and Welfare Association:広東省漢達康福協会)は1996年に設立された中国の広西省、広東省、雲南省で活動しているハンセン病回復者支援団体です。回復者の経済自立支援、回復者やその子どもたちの初等教育から高等教育までの教育支援、生活環境向上、職業訓練、啓発冊子の制作まで、幅広い活動を行い、5000人強の回復者やその家族たちを毎年支援しています。
HANDAのホームページ

[活動レポート ― ハンセン病]
ミャンマー初等中等教育

ミャンマーは、1998年にMDTを導入し、2003年に国レベルでハンセン病制圧目標(人口1万人当たり患者数が1人未満となること)を達成しました。しかし、ミャンマーは広い辺境地域と多くの少数民族を持つために、地域レベルでは、未達成の地域もあり、ハンセン病に伴う偏見・差別も根強く残っています。ハンセン病患者・回復者及びその家族は、そのような偏見・差別によりさまざまな困難・制約に直面しています。ハンセン病を親が患ったことから、貧困・偏見・差別により、その子どもたちが教育を受けられないこともあります。

このような状況を踏まえ、2017年4月から2018年3月までミャンマー国内14か所のハンセン病の回復者とその家族たちが住む村(コロニー)において、ハンセン病患者・回復者の子供たちの教育状況改善のために、294人の子供たちへの教育支援をMAM(マム)(注1)を通じて行いました。具体的には、子どもたちの学費や制服代、文具費、昼食代を賄うための奨学金の付与です。294人のうち85人は小学生、154人は中学生、43人は高校生、12人は大学生でした。

教育支援を受けた子供たちが通う小学校にて

教育支援を受けた子供たちが通う小学校にて

この教育支援は、貧しいハンセン病患者・回復者が子どもたちを学校に通わせるきっかけとなり、子どもたちは定期的に学校に通えるようになりました。実際に支援をした村々では、例年15%程度の子供たちが学校を中途退学せざるをえなかったのですが、現在ではそれが5%となりました。

小学校で給食を食べている様子(給食は子供たちにとって貴重な栄養を得られると共に、学校へ行くモチベーションにもなる楽しい時間です。)

小学校で給食のスープを食べている様子(給食は子供たちにとって貴重な栄養を得られるとともに、楽しいひとときです。)

また、この教育支援によりこれらの村の子供たちの知識、態度、行動にも改善がみられ、教育支援を行った各地域において、ハンセン病回復者やその家族たちに対するイメージが向上したという波及効果もみられました。

 

注1:MAM(マム)は正式名をMyitta Arr Marn(ミャンマー語で「よりよい希望の力」)といい、2006年4月に元保健省職員が中心となってミャンマー初のハンセン病回復者のためのエンパワーメント・ワークショップが開催された際に、参加した回復者たちによって設立されたハンセン病回復者組織で、ハンセン病回復者の自立と尊厳の回復を目指して活動を続けています。ミャンマーにある14か所の全てのコロニーに支部(SUB-MAM)を立ち上げて、各地においてハンセン病患者や回復者に寄り添った支援を行っています。

[活動レポート ― ハンセン病]
バングラデシュ栄養教育

バングラデシュは、1998年に公衆衛生上の問題としてのハンセン病の制圧を達成しているものの、毎年約3,000人強の新たな患者が出ており、ハンセン病はいまもなお大きな問題となっています。また、同国における国民の栄養状態は悪く、全国の5歳以下の子どものうち36%が栄養失調です(1996年は60%)。低栄養はハンセン病の臨床症状に大きく影響するリスク要因であり、病気の感染・発症を防ぐためにも、バングラデシュにおいて国民の栄養状態を改善することは重要といえます。

 

このような背景の中、2017年7月よりバングラデシュ北部の古都ボグラ県のハンセン病定着村において、Lepra(レプラ)(注1)を通じてBogra District Federation(ボグラ地域連合)(注2)によって、ハンセン病回復者や障害者、特に女性や子供達のために活動を行っている自助グループのメンバーが、バランスのよい食事の重要性を学び、栄養がある食事を提供・摂取できるようになることを目的に栄養教育の事業を開始しました。

 

自助グループの勉強会に参加する女性たちとその子供達

自助グループの勉強会に参加する女性たちとその子供達

まず、12ある女性の自助グループの各リーダーたちが栄養教育を受けました。その後、そのリーダーたちが自助グループのメンバーに半年間で860回以上の栄養教育の勉強会を開きました。それには自助グループメンバーだけでなくその家族や近隣の人たちも含めて半年間で4,000人以上が参加しました。最終的には10,000人の人々が栄養教育を受ける見込みです。加えて、野菜栽培とその調理指導教室も半年間で60回開かれ、600人以上が参加しました。こちらも最終的には1000人が受講予定です。

 

この地域では以前は、わずか10%の女性だけが健康的な食事が摂れていたとされていましたが、このような栄養教育を多くの女性たちが受講することにより、自分自身や子供達の栄養について考えるようになり、健康的な食事が摂取できるようになりました。

 

自助グループの女性たちの調理指導教室の様子

自助グループの女性たちの調理指導教室の様子

前述した通り、栄養状態が悪いこととハンセン病に感染することには関連性があるとの研究結果が出ており、今回、栄養教育を学んだ母親たちによって、子供たちの栄養状態が良くなることで、将来的にハンセン病を発症するリスクを減らすことが可能となります。

 

注1:Lepra(レプラ)は、1924年より英国に本拠地をおいてハンセン病関連の活動をしている団体です。モザンビーク、アンゴラ、ブラジル、マラウィ、バングラデシュ、インドを中心に啓発活動、早期発見・治療活動、保健システムの改善等を行っています。

Lepraのホームページ https://www.lepra.org.uk

上記事業の紹介もHPでしています。https://www.lepra.org.uk/nutrition-education-project

 

注2:Bogra District Federation(ボグラ地域連合)はボグラ県を代表するハンセン病の回復者団体です。おおよそ1000人のメンバーで構成する自助グループのネットワークがあり、1か月に2回定期的に会合を持って参加者に新しいスキルを学ばせたり、問題を話し合ったりしています。

[活動レポート ― ハンセン病]
統合的な疾病対策促進活動 ― ハンセン病の症例分布調査 ―

世界にまだいくつか残っているハンセン病の蔓延地の多くは、保健医療へのアクセスが非常に困難な地にあります。そこで当財団では、ハンセン病対策を他の疾病対策と統合し、保健医療へのアクセス拡大を図る活動への支援を行いました。

 

ハンセン病の症例が今日なお多くみられるアジアやアフリカ諸国では、その他の顧みられない熱帯病(NTDs: Neglected Tropical Diseases)(注1)の問題も抱えており、その対策活動が進んでいます。そこで、ハンセン病の症例の地理的分布調査を行い、他のNTDsの症例分布と照らし合わせ、協働することができる地域を特定し、それらの疾病対策と統合したより効果的な保健医療サービスの提供制度を構築するための仕組みづくりが開始されました。この活動は、American Leprosy Mission(ALM:アメリカ救らい協会)(注2)が主導して、Accelerating Integrated Management (AIM:統合的疾病対策促進)(注3)チームが行っており、当財団はその初期段階であるハンセン病の症例の分布調査への支援を行いました。

現地状況調査のための保健職員による住民への聞き取り(リベリア)

現地状況調査のための保健職員による住民への聞き取り   (リベリア)

 

2018年初頭までに、カメルーン、ナイジェリア、モザンビーク、リベリア、ガーナ、ミャンマー、スリランカの7ヵ国で、各国保健省の合意と関係NGOの協力を取り付け、調査活動が実施されています。分布調査が完了したミャンマーでは、この情報を基に、他疾病と協働した患者発見活動や、ハンセン病予防薬のパイロット実施地の選定を行うなど、新しい取り組みを推進しています。また、ナイジェリアでは、完成した症例分布図の有効性を維持するために、最新の症例データを収集するためのシステム開発とその導入も進められています。これから、他の国々でも分布調査を完了させ、効果的な保健医療の提供を可能にするシステムの実現が期待されています。

 

ガーナ沿岸地域の感染症の症例分布(赤:ブルーリ潰瘍、黄:ハンセン病、青:象皮病)

ガーナ沿岸地域の感染症の症例分布(赤:ブルーリ潰瘍、黄:ハンセン病、青:象皮病)

注1:顧みられない熱帯病(NTDs: Neglected Tropical Diseases)とは、熱帯地域を中心に蔓延している寄生虫や細菌による感染症のことで、貧困層を中心に世界の約10億人が感染し、年間50万人が死亡していると言われています。これらの熱帯病は先進国でほとんど症例がないために、世界の3大感染症であるエイズ、結核、マラリアと比べて、これまで世界の関心を集めることがありませんでした。ハンセン病もこのNTDsの一つとなります。

 

 

注2: American Leprosy Mission(ALM:アメリカ救らい協会)は100年以上前から米国の南カロライナ州を本拠地に世界中でハンセン病患者や回復者のための支援活動を行っています。最近はコートジボワール、コンゴ共和国、インド、リベリア、ミャンマー、ネパール、フィリピン、コンゴ民主共和国の8か国において事業を展開しています。

American Leprosy Missionのホームページ https://www.leprosy.org/

 

注3:Accelerating Integrated Management(AIM:統合的疾病対策促進)事業はALMとロンドン大学公衆衛生学・熱帯医学大学院、ガーナ保健省との共同チームによって開始され、統合的な疾病対策促進活動を各国の保健省やNGO等と協力して進めています。

Accelerating Integrated Managementのホームページ http://aiminitiative.org/

[活動レポート ― ハンセン病]
ハンセン病定着村における環境改善 ミャンマーより

ミャンマー東部の国境付近に位置するシャン州は、独立を求める少数民族が多く暮らし、武装組織との戦闘が多発しており、政治的に不安定な地域です。またアクセスが困難なため医療システムも機能していない地域も多くみられます。ハンセン病の罹患率も高く、州内にはハンセン病定着村も複数ありますが、そこでの生活環境は厳しく、学校さえもありません。これらの状況を改善するために、シャン州の8つのハンセン病定着村において、水タンクの設置や小学校建設などの環境改善活動への支援が2017年に開始されました。この支援はThe Leprosy Mission(TLM:英国救らいミッション)ミャンマー事務所(注1)を通して、シャン州で30年以上もハンセン病関連の活動をしているChristian Leprosy Mission, Eastern Shan(CLEMES:東シャン州キリスト教救らいミッション)(注2)が実施しています。

これらの活動は、各々の村で住民主体が参加型で行うことによって、住民一人一人の自尊心や村への想いを高めるとともに、長年ハンセン病定着村として差別の対象とされてきた村が、周辺の住民たちによって差別されず、「ひとつの村」として認識されるようになることを目的に実施されています。

Le Po(ルポ)村では住民たちが衛生環境を向上するために、まず水タンク建設に協力しました。タンクの土台をつくるために、女性たちもセメント作りに積極的に参加し、一丸となり完成させました。そしてパイプをつなげて水路をつくり、水を村に運べるようになりました。上水道が整備されたことにより、衛生状態が改善し、さまざまな感染症の罹患率も下がることが期待されています。

また、この村は周囲から隔絶した場所にあるため、これまで住民の子どもたちは、学校に通うことができませんでしたが、来年までに小学校が建設されることになりました。ここでの小学校の建設は、これまで子どもたちに教育の機会を与えたいと願っていた親たち、又、将来の夢を描くことができなかった子どもたちにとって、大きな希望となっています。これから将来を担う子どもたちが、学ぶ喜びを得ることにより、いままでは考えられなかったような大きな夢を持つこともできるようになるでしょう。

ミャンマー環境改善

 水タンクをつくるために、セメント作りから住民が取り組みます。
その過程には、女性も積極的に参加し、住民全体の強いオーナーシップが芽生え、
よりよい管理体制も期待されます。

ミャンマー環境改善2

 学校建設予定地で、完成を心待ちにしている子どもたち。
校舎の支柱となる木材は、周辺の山々から木を伐採して村へ運んできました。

注1:The Leprosy Mission(TLM:英国救らいミッション)は、英国を本拠地に130年以上もハンセン病関連の活動を行っているキリスト教団体で、ミャンマーでは1898年より地元のキリスト教団体や病院と一緒に活動を行っています。現在、TLMはミャンマーではハンセン病と障がい者問題のリーダー的な存在です。主に保健サービスや公共の場へハンセン病患者や障がい者がアクセスしやすいようにしたり、偏見差別をなくし、ハンセン病患者や障がい者の社会参加を促したりする活動を行っています。
The Leprosy Missionのホームページ

注2:Christian Leprosy Mission, Eastern Shan(CLEMES:東シャン州キリスト教救らいミッション)は、シャン州の少数民族が多い地域でキリスト教会によって30年前からハンセン病や貧困と立ち向かうことを目的に活動が開始され、現在では医療アシスタント、患者の潰瘍の処置をはじめ、重力フロー給水、バイオサンドフィルター、衛生設備、小学校建設などの社会インフラにかかる活動も行っています。

[活動レポート ― ハンセン病]
ハンセン病定着村における環境改善 インドネシアより

学生などの青年がハンセン病定着村に数週間暮らしながら(キャンプ)、村の清掃活動や道路整備などの環境改善活動(ワーク)を行うことをワークキャンプと呼んでいます。住民である回復者と交流を重ねることを通じて、青年自身の心身の向上にもつながっていると、現地ならびに国内でも高い評価が寄せられています。

 

ワークキャンプ運営団体Leprosy Care Community(LCC)注1は、東ジャワ州ンガンゲット村で活動を行っています。インドネシアでは、ハンセン病患者や回復者、その家族への偏見・差別が、未だに根強く、深刻な問題となっているため、ハンセン病定着村におけるワークキャンプ活動は、インフラ整備による生活環境の改善だけでなく、村の中と外の一般社会をつなぐ架け橋にもなっています。

 

回復者の家族、特に子どもたちは、進学や就職などの理由により、村を出た後、戻らないことが多くあります。そのため、村には高齢者のみが残り、村の発展が期待できないという状況が多くの定着村に共通してみられます。ンガンゲット村も例外でなく、回復者の子どもたちは、村を「故郷」と考えず、都会へ出て働きたいという希望が多くありました。そこで、LCCは、村の住民と村の将来像を描くことから始めました。若者を中心とした集会を開き、清掃活動を行うと共に、村の中に湧いている温泉にも注目しました。温泉周辺の環境整備を行ったところ、村の外からの利用者が増えました。

温泉に続く道に手すりを付け、歩きやすくなりました

温泉に続く道に手すりを付け、歩きやすくなりました

 

建設した更衣室は、村の外からの利用者に好評です

建設した更衣室は、村の外からの利用者に好評です

そこで、2017年度は、温泉をより多くの人々が利用するようになるために、温泉へ続く道の舗装と更衣室の建設を行いました。その結果、ンガンゲット村がハンセン病定着村であることを気にせず温泉を利用する人が多くなり、温泉の駐車料金などの支払いを通じて、村の収入が増え、村の中でも働く機会を得られるようになりました。いま、若者たちは、温泉施設への注目を通して、村への「故郷」としての誇りが生まれ、自分たちの手で、村の将来をどうするか、考え始めています。今後のンガンゲット村の発展が大きく期待されます。

 

 

 

 

注1:

Leprosy Care Community (LCC) は、2010年の設立以来、年々活動範囲を拡げ現在では4か所でワークキャンプが実施されています。

http://www.lccui.com/

インドネシアでは2018年度に、こうした各地のワークキャンプをコーディネートする組織として「JALAN Indonesia Work Camp CoordinateCenter」が立ち上がりました。

 

[活動レポート ― ハンセン病]
世界のハンセン病の今とこれから ~官民パートナーの協力による制圧に向けて~ 

世界保健機関 (World Health Organization: WHO) は、世界のハンセン病対策に熱心に取り組んでいます。笹川記念保健協力財団は1974年の設立以来、日本財団と共にその活動を40年以上にわたって支援してきました。かつては世界で推定1千万人以上の患者がいたハンセン病ですが、1980年代初めに開発された治療薬(MDT)と1991年の世界保健総会での数値目標を伴う制圧決議により、官民が同じ目標に向かって努力をした結果、今日までにその数は20万人台まで減少しました。しかし、皮肉な事に、患者の減少により、社会におけるハンセン病への関心が急速に薄れてきています。関心の薄れは、対策活動をするNGOへの寄付の減少、政府や研究機関での予算削減を招き、世界のハンセン病対策を指導・監督するWHOは大きな困難に直面しています。

WHOのガイドブック 「2016-2020世界のハンセン病戦略 ~ハンセン病のない世界をめざして」

WHOのガイドブック 「2016-2020世界のハンセン病戦略 ~ハンセン病のない世界をめざして~」

WHOは5年毎に対策活動の評価を行い、新たな戦略を発表しています。現在の戦略「2016-2020:ハンセン病のない世界を目指して」は、患者を減らすだけでなく、ハンセン病に伴う障がい(特に子供の障がいをゼロとする)、偏見・差別を無くすと共に、各国政府の対策活動への更なる努力とNGOとの協働の強化を大きな目標としています。

一目でわかるハンセン病戦略: 自転車の前輪は病気を治すこと、後輪は社会的烙印や差別のない社会の実現を示し、両輪がかみあってはじめて、ハンセン病のない世界に向かって走ることができる

一目でわかるハンセン病戦略:
自転車の前輪は病気の治癒、後輪は社会的烙印や差別のない社会の実現を表し、両輪がかみあってはじめて、ハンセン病のない世界に向かって走り出すことができる

日本財団はWHOのハンセン病対策活動に対して資金援助をしており、笹川記念保健協力財団は日本財団からの要請により、回復者を含むハンセン病の世界的専門家からなる諮問委員会を編成し、毎年WHOの活動評価を行っています。今年は、12月11-12日の2日間、インド、デリーのWHO南東アジア地域事務所で委員会を開催しました。WHOの6つの地域事務局のうち、ヨーロッパを除く5地域のハンセン病担当官と世界全体を統括するチームリーダーが出席し、現状と問題点、次年度の計画に関する議論に加え、今年は、過去10年間新患数に変化が無いという停滞を突破するための新しい対策手法に関する研究開発状況などを含む、中長期的対策活動に関する突っ込んだ議論がなされました。

民族衣装サリーを着た南東アジア地域事務局長、「RDマダム」(中央)の挨拶民族衣装サリーを着たシン南東アジア地域事務局長(中央)の挨拶

長く、医療的な側面のみ捉えられてきたハンセン病問題ですが、その根源的な解決には、患者数を減らすだけではなく、偏見と差別の問題に取り組む必要があります。ハンセン病にかかったから、そしてハンセン病にかかった家族がいるから、何千万、何億という人々が偏見と差別の対象となってきました。差別のために社会生活が送れず、早期に診断を受けることができず、治療を完了することができないという現状を変えるためには、今後一層の努力が必要です。ハンセン病の問題は、社会と病気、病気と人生についての普遍的、かつ根源的な問いを投げかけてくれています。

南東アジア地域事務所入口。近年デリーの大気汚染はすさまじく、予防マスク姿の参加者もちらほら。

南東アジア地域事務所入口。近年デリーの大気汚染はすさまじく、予防マスク姿の参加者もちらほら

 

二日間の会議中、お昼やコーヒータイムには事務局内の食堂で一息。豆カレーやサモサ、スイーツが美味でした。写真は世界一甘いと言われる「歯が溶けそう」なスイーツ、グラブジャムーン

二日間の会議中、お昼やコーヒータイムには事務局内の食堂で一息。豆カレーやサモサ、スイーツが美味。写真は世界一甘いと言われる「歯が溶けそう」なスイーツ、グラブジャムーン

[活動レポート ― ハンセン病]
インドネシア 州レベル制圧活動促進 ~WHOハンセン病制圧大使のゴロンタロ州訪問~

笹川会長が誰と一緒にいるか、わかりますか?

ここは、インドネシアのスラウェシ島北部・ゴロンタロ州の空港です。ゴロンタロの民族衣装に身を包んだ男女の青年が、州知事書記官や州保健局長等とともに、歓迎してくれました。

1_ゴロンタロ空港にて

ゴロンタロの風景

ゴロンタロの風景

インドネシアの状況 - 未制圧州(赤)

インドネシアの状況 – 未制圧州(赤)

州レベル制圧達成ロードマップ(保健省作成、2014年時点)

州レベル制圧達成ロードマップ(保健省作成、2014年時点)

インドネシアは、インド、ブラジルに次ぎ、世界で3番目に患者が多い国で、年間17,000人ほどの方が病気を発症しています。「人口1万人あたり登録患者数1人未満」という病気の制圧基準を、2000年に国レベルで達成しているものの、州レベルでは全34州のうち、未だ12州が未制圧です。政府は、2020年までに全州での制圧達成を目標に掲げました。笹川会長は、WHOハンセン病制圧大使として、この政府の目標達成への試みを支援すべく、2016年末、全未制圧12州を訪問することを保健大臣に約しました。本年7月、北マルク州、北スラウェシ州を訪問し、先月11月には、ゴロンタロ州を訪問しました。

2_リンボト第12小学校での検診活動を視察激励 (※体育の授業前、体操着に着替える際に、学校の先生が体に斑紋がないかチェックしている)


リンボト第12小学校での検診活動を視察激励
(※体育の授業前、体操着に着替える際に、学校の先生が体に斑紋がないかチェックしている)

 

ゴロンタロ州は、未制圧12州のうち、明年2018年に制圧達成を目標とする3州の1つで、政府戦略の中で非常に優先順位の高い州です。年間の新規患者数は200人ほどですが、人口1万人あたりの患者数は2.29を示し、未だ1.0未満という制圧基準の達成は厳しい状況にあります。そこで、WHO、保健省と協働し、同州のハンセン病対策活動の一層の推進を念願して、蔓延地における患者発見活動を視察し、現場担当官等を激励するとともに、特に制圧達成の課題となっている偏見差別を是正するため、病気の正しい知識を伝えるための啓発活動に参加し、一般市民の理解の促進に努めました。

(※ハンセン病という病気と社会からの差別の双方への怖れから、初期症状に気が付いても病院へ行かず、診断が遅れるケースが多い。)

3_ジャカルタ州知事との会見(左から、笹川会長、PerMaTa代表Paulus Manek氏、副代表Al Kadri氏、アニス州知事、ジャカルタ州保健局長)

ジャカルタ州知事との会見
(左から、笹川会長、PerMaTa代表Paulus Manek氏、副代表Al Kadri氏、アニス州知事、ジャカルタ州保健局長)

 

出国前には、ジャカルタにて、ジャカルタ州知事アニス・バスウェダン氏、副大統領ユフス・カラ氏と会見し、回復者組織PerMaTaの代表を紹介しつつ、政府レベルでの病気への理解と、当事者と連携したサービスの重要性、ハンセン病対策活動への一層の支持を訴えました。

 

 

 

これから、残る9つの未制圧州訪問と、回復者組織PerMaTaによる行政と連携した活動について紹介してゆきます。どうぞご期待ください!

 

[活動レポート ― ハンセン病]
ハンセン病対策の新たな取り組み

5月30 ~ 31日、インド・デリーの世界保健機関南東アジア地域事務所(WHO SEARO)で、ハンセン病の診断、治療、予防に関する専門家グループ会議が開催されました。

WHO SEAROにて

WHO SEAROにて


会議の目的は、新しい診断、治療、予防法の研究結果を検証し、日常業務の中で使用可能な方法として推奨すべきか否かの判断をする、というものです。専門家グループには、
細菌学者、疫学者、医療経済学者、国のハンセン病対策担当官などに加え、ハンセン病の回復者も専門家として含まれていました。
WHO 発表の最新の統計(2015年)によれば、同年の世界の年間新患数は210,758人です。10 年前の2005 年には286,063人でしたので、この間に約4%の穏やかな減少を示してはいますが、2000 年前後の急速な減少と比べると停滞感は否めません。現在の対策活動が維持され4%の減少が続く場合、今後革新的な対策方法を導入せずとも、約140 年後には患者はゼロになると言われています。しかし、ハンセン病に対する関心はさらに薄れ、それに伴い予算規模、経験を積んだ専門家も減っていくと予想されるので、4%の減少率を維持することは困難と思われます。今回の会議ではこうした現状を鑑み、4つのテーマが検討されました。
一つ目は、誰でも正確に診断できるELISA(抗原/抗体反応を利用した検査方法)やPCR 法(DNAによる検査方法)を利用した診断法です。
現在、ハンセン病の診断は初期症状である斑紋により行っており、技術と経験が求められます。より簡便で正確な診断法は、制圧に大きく貢献すると期待されます。
二つ目は、菌の多少によらない共通の治療法です。ハンセン病の治療は多剤併用療法(MDT)と呼ばれ、3 種の抗生剤を内服しますが、少菌性と多菌性では、抗生剤の配合と服用期間(6 ~ 12か月)が異なります。共通の治療法(U-MDT)では、同一配合MDTを6か月服用します。菌の多少の区別をする必要が無いので診断を容易にし、服用期間が短くなることで患者の負担軽減が期待されます。
三つ目は、らい菌の感染や感染しても症状発現を防ぐ予防法です。抗生剤リファンピシンの内服やBCG接種による効果が研究されており、今回の会議でも検討されました。
予防法が実現すれば、制圧への貢献は言うまでもありません。
四つ目は、将来避けては通れない薬剤耐性菌出現への対策です。現在のところ、MDT治療への耐性菌の問題は極めて小さいとのことですが、WHOでは耐性菌調査専門家グループを編成し、注意深く観察を続けています。
いずれのテーマも、制圧への貢献が期待されるものでしたが、回復者からは、研究中の予防法が偏見・差別につながる可能性や短い治療期間による治療の確実性への危惧が指摘され、十分なエビデンスを提出するようにとのコメントがされました。今回の検討結果は今年中には公表されるとのことです。


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