[活動レポート ― ハンセン病]
「ハンセン病問題の今後を考える」

「グローバルアピール(2015)~ハンセン病に対するスティグマと差別をなくすために~」が第10回目を迎え東京から発信されたのを機に、その協賛イベントとして、日本各地で企画されたハンセン病に関するイベントへの助成と、ハンセン病問題の今後を考えるリトリート(合宿型の話し合い)、3都市での講演会を開催しました。

グローバルアピール2015と両陛下謁見
日本財団は回復者、宗教者、企業、教育機関などの賛同を得て、2006年より毎年「グローバルアピール~ハンセン病に対するスティグマと差別をなくすために~」を発信しています。10 回目にあたる今年は、初めて日本からの発信となりました。国際看護師協会の賛同を得たグローバルアピール2015は、1月27日に国内外から多くの参加者を得て盛大に発信されました。翌日には、本式典に参加した日本と海外のハンセン病回復者8名が、天皇皇后両陛下の謁見を許されました。「故郷では家族さえも私に触れることを避けたのに、両陛下から親しく話を聞かれ手を握っていただき、感無量です」と感動を口にしていました。

富士山のふもとでの集合写真

富士山のふもとでの集合写真


御殿場リトリート(GOTEMBA RETREAT 2015)
グローバルアピールや両陛下謁見に続き、ブラジル、インド、インドネシアなどのハンセン病回復者を中心とした、11カ国25名と共に、ハンセン病問題の現在と今後を考える会を開催しました。世界の多くの国では、ハンセン病患者数は減少している一方で、今なお新たな患者が発見されている高蔓延地域があります。患者数の減少にともない、国レベルでのハンセン病対策の優先順位が下がる中で、ハンセン病サービスとその質の維持が今ほど問われている時代はありません。11カ国の参加者と共に2泊3日をかけて、2つのテーマについて話し合いました。1つは、ハンセン病回復者自身による、ハンセン病サービスへの積極的な参加について。ハンセン病サービスとその質を維持するために、回復者自身が「自分たちの」サービスに声を上げ、行動を起こし始めています。この動きを進めるために必要なのは何かを協議しました。もう1つは、ハンセン病問題に取り組む新しい「当事者」(担い手)について。日本をはじめとする多くの国では、厳しい差別や隔離の時代を生き抜いた回復者は高齢となり、活動も難しくなってきました。その回復者と共にあり、その声を代弁し、語り継ぎながら、ハンセン病問題に正面から向かい合い、自分の問題として取り組む人たちが現れています。今後は病気を体験した回復者に加え、ハンセン病問題を自分の問題として取り組む人たちも含む「当事者」を増やしていこう、と話し合われました。2つの大きなテーマを語る刺激に満ちた2泊3日は、参加者によるさらなるコミットメントと共に幕を閉じました。
会議の様子(於:静岡県御殿場市)

会議の様子(於:静岡県御殿場市)


「ハンセン病問題を語り継ぐもの」講演会
当財団はグローバルアピール2015を大きな国内啓発の機会とすべく、ハンセン病啓発企画を公募し、協賛イベントとして助成しました。同時に、新たなハンセン病問題の「当事者」(担い手)が現れつつあるマレーシア、中国、日本の3カ国の語り手による講演会を、大阪では追手門学院大学社会学部共催、鹿児島では星塚敬愛園自治会共催、国立療養所星塚敬愛園後援、東京では日本財団学生ボランティアセンター後援で開催しました。中国には今なお600を超えるハンセン病回復村があります。そこには、家族や外の社会との交流を断たれた、高齢の障がいを持つ回復者が暮らしています。かつて「死ぬのを待つだけだ」と言っていた村人が、希望を取り戻したのは、学生の力でした。村人と学生は、支援する者とされる者という関係を軽々と越え、強い絆で結ばれています。中国からは、学生という新しい「当事者」を、回復者の視点から欧鏡釗さんが、ワークキャンプのコーディネーションNGOのJIAから菅野真子さんが語り手として話をしてくれました。マレーシアのクアラルンプール近郊にある、かつて世界で2番目に大きかったスンゲイブロー療養所の入所者は子どもを産むことは許されていましたが、育てることは許されませんでした。所内の乳児施設で育てられた子どもの多くは、国内外に養子に出されました。高齢化が進む入所者は、最後に一目でいいから我が子を目にしたいと切望しています。数十年と言う時が過ぎた現在、入所者の子どもを探すのは非常な困難を伴いますが、見つかった第2世代の中には、ハンセン病を理由に親に会うことを拒む人も少なくありません。その中で今、語り部として活動を始めた第2世代がいます。マレーシアからは、入所者と第2世代をつなぐ取り組みを続けるエニー・タンさんと、第2世代として語り部活動を行うノラエニ・モハメドさん、そしてノラエニ・モハメドさんの娘で日本に留学中のナジーラ・バスリさんが話をしてくれました。大阪では中国とマレーシアの話に加え、長島愛生園歴史館の学芸員である田村朋久さん、鹿児島では星塚敬愛園入所者の小牧義美さんと上野正子さん、東京では弁護士の山本晋平先生にお話をいただきました。ハンセン病問題は歴史として残すだけ、また、知識として知るだけでは十分ではありません。そこから得られた普遍的な問題提起を、どのように現在、未来に活かしていくか、ということが重要であり、そのことを考える機会となりました。
開催にあたり、追手門学院大学、国立療養所星塚敬愛園には多大な協力をいただき、予想を超える多くの参加者を得ての講演会となりました。「ハンセン病に関する講演会にこれだけの人が参加する日本は、意識が高い」と、語り手も強い印象を持って帰国しました。
鹿児島講演会場の様子 (於:鹿児島県鹿屋市)

鹿児島講演会場の様子 (於:鹿児島県鹿屋市)