[活動レポート ― ハンセン病]
島の命を守る救急船

世界第2の島数を有するフィリピンでは、経済的・地理的な理由で、命に関わる病気やけがをしても、病院に行けない人たちがいます。パラワン州北部で、島に住んでいても、障がいがあっても、貧しくても、天気が悪くても、緊急時に必要な医療にアクセスするための取り組みを支援しました。
病院に行けないのはなぜ?
かつて世界最大のハンセン病隔離施設であったクリオン療養所ならびに総合病院は、現在ではパラワン州北部を管轄する地域中核病院です。その管轄地域で暮らす約25万5 千人の健康を守る上で課題となっているのが、貧困と医療施設へのアクセスです。
同地域で暮らす約3 割は貧困層です。病院までの交通費や治療費が払えない、仕事を休めば家族の暮らしが成り立たないなど、さまざまな理由から、なかなか病院に行くことはできません。明らかに重篤な状態になって初めて病院に行きますが、すでに手遅れのことも少なくありません。もう1つの課題は、医療施設へのアクセスです。病院管轄地域には中小の島が点在していて、病院のあるクリオン島までモーター付きの船でも6時間以上かかるところもあります。天候が悪く海が荒れると、船は出せませんし、サンゴ礁の浅瀬が多い同地域は、夜間の船やボートの航行はできません。一刻を争う緊急時に、適切な医療を提供できる病院まで患者を搬送することができず、救える命が失われてきました。どうしたらパラワン州北部の人たちの命を守ることができるのか。出された結論が救急船でした。たとえ夜でも、天候が悪くても、モーター付きの船を借りるお金がなくても、必要であれば誰もが病院にアクセスを確保するための救急船。フィリピンには、これまで急病人やけが人を搬送するスピードボートはありましたが、搬送中に医療行為を行える救急船はありませんでした。度重なる協議の末、船内で必要な救命行為が行える救急船の供与が合意されました。造船は2014 年末に始まり、2016 年7月にクリオンに届けられました。
パラワン州北部に届いた日比友好の救急船
今回の救急船を可能としたのは、日本のボートレースチャリティ基金です。2002年に作られた同基金は、モーターボート選手からのご寄付や、選手の私物をオークションにかけた入札金をもとに、これまでフィリピンの他、世界各国のハンセン病対策に役立てられています。2016 年8月、救急船が配備されるクリオン総合病院で、進水式が行われました。式典には、ボートレースチャリティ基金の委員である日本モーターボート選手会、日本レジャーチャンネル、日本財団、笹川記念保健協力財団の他、ミマロパ地域保健局長、救急船がカバーする4市の市長や市会議員、クリオン総合病院職員、ハンセン病回復者など多数が集まりました。多くのメディアも駆けつけ、テレビ、新聞でも大々的に報じられました。日比友好の救急船が、パラワン州北部の健康を守ることを、そして救急船の使用がフィリピンの他地域でも広がっていくことを期待します。

救急船

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