[活動レポート ― ハンセン病]
ハンセン病の歴史を人類の遺産に 第5回人類遺産世界会議 ~ハンセン病の歴史を語り継ぐ~ 開催

一般公開日には400 名を超える来場者で会場は満席となり、世界各地の歴史保存の取り組み、語り継ぎの可能性、当事者の想いについて語られました。非公開の日には、ワークショップや療養所訪問と併せ、海外15カ国約40 名の参加者により今後の展開についての議論が交わされました。

世界15カ国(アメリカ合衆国、イタリア、韓国、ギリシャ、コロンビア、スペイン、タイ、中国、日本、ノルウェー、ブラジル、フィリピン、ポルトガル、マレーシア、南アフリカ)からの参加者たちの笑顔

世界15カ国(アメリカ合衆国、イタリア、韓国、ギリシャ、コロンビア、スペイン、タイ、中国、日本、ノルウェー、ブラジル、フィリピン、ポルトガル、マレーシア、南アフリカ)からの参加者たちの笑顔


完全に失われる前に
疾病としてのハンセン病の対策は、近年になり多大な成果を上げました。そのためハンセン病は「過去の病」として見られるようになり、その記憶や記録は急速に失われつつあります。厳しい差別と偏見、科学の発展による疾病制圧、そしてこの病を生き抜いた人々の軌跡により織りなされるハンセン病の歴史は、世のあらゆる偏見と差別の問題に通じます。ハンセン病の歴史を通し、疾病、出自、障がい、宗教などがハンデとならず、誰もが自分らしく生きられる社会を考えることができます。今回の会議では、悲劇の重さを量るためだけではなく、辛さや悲しみを超えた生命の輝きの証としてのハンセン病の歴史を人類の遺産として社会全体で守り、後世に伝えていこうとする世界各国の動きが紹介されました。各国の参加者が、互いの取り組みについて存分に話し合い、そこで学んだことを自分の国における活動に実際にどう生かしていけるのかを考え、同じ目標を持つ国同士がどのように協力し合っていけるのかについて意見を交換しました。
中村医師の講演

中村医師の講演


また、特別講演として、ペシャワール会代表の中村哲医師をお招きし、「ハンセン病からいのちの水へ」と題して、アフガニスタンでハンセン病治療に携わったご経験が、どのように現在の氏のライフワークである井戸掘りにつながっているのかについて話していただきました。
かけがえのない歴史を未来に届けるために
前回の第4回目の会議では、海外20カ国のハンセン病の歴史保存の取り組みと課題についてお互いに知り、保存のために協力し合うことを誓いました。それを受けて今回の会議では、ハンセン病の歴史保存の先にある歴史継承に焦点を当て、後世に確実に語り継ぎ、ハンセン病の歴史が世界の歴史を理解する上で欠かせないものであることを広く認識してもらうためには実際にどうしたらよいのかについて話し合いました。
誓いの署名ボードにサイン

誓いの署名ボードにサイン


参加した海外15カ国のハンセン病の歴史保存に関わる回復者とその家族、行政機関関係者、NGO、歴史研究者たちにとって、今回の会議は、ユネスコ世界遺産、世界の記憶、国家遺産、重要文化財、芸術祭、ツーリズム、都市計画(公園・緑地計画)などの取り組みの実例について学ぶまたとない機会になりました。また、相互交流を通じ、歴史を語り継ごうとする人々が共通の課題について互いから学び合えるパートナーシップを作っていくことで、個々の団体の活動を社会全体の活動にまで広げることができることを改めて認識できた場でもありました。共催である瀬戸内市にはユネスコ世界遺産登録を目指す2つの療養所があり、海外からの参加者たちも市の積極的な取り組みを知って大いに勇気づけられたことでしょう。
歴史を救うために今やらねばらないこと
参加者による話し合いの結果、実際に歴史保存と継承を進める上で、各国が早急に取り組むべき4つの共通課題が明らかになりました。
1. 場所や建物をできる限り残そう(世界遺産登録などにより)
2.残されたモノにもっと語らせよう
3.回復者と第2、第3、第4世代を結びつけよう
4.もっと学術的研究を
「緊急性」という言葉をキーワードとし、これらの課題を前に、まずは各国の現状と目標を見直し、国を超えた地域ネットワークや活動組織づくり、バーチャル博物館やツイッターなどの情報発信ツールの開拓と活用、NGOや歴史保存団体などとの協力関係づくりに取り組んでいくことを誓い合いました。当財団は各国の実際の活動支援を行うとともに、それぞれの課題解決に果たしうる役割を提案していきます。ハンセン病を生き抜いた人々の歴史はもちろんのこと、それらを守り伝えていこうと努力している人々の思いや願いも伝わっていくことで、より多くの人々に今私たちが生きている世界をもう一度見つめなおしてもらうことを強く願っています。