[活動レポート ― ハンセン病]
ハンセン病対策の新たな取り組み

5月30 ~ 31日、インド・デリーの世界保健機関南東アジア地域事務所(WHO SEARO)で、ハンセン病の診断、治療、予防に関する専門家グループ会議が開催されました。

WHO SEAROにて

WHO SEAROにて


会議の目的は、新しい診断、治療、予防法の研究結果を検証し、日常業務の中で使用可能な方法として推奨すべきか否かの判断をする、というものです。専門家グループには、
細菌学者、疫学者、医療経済学者、国のハンセン病対策担当官などに加え、ハンセン病の回復者も専門家として含まれていました。
WHO 発表の最新の統計(2015年)によれば、同年の世界の年間新患数は210,758人です。10 年前の2005 年には286,063人でしたので、この間に約4%の穏やかな減少を示してはいますが、2000 年前後の急速な減少と比べると停滞感は否めません。現在の対策活動が維持され4%の減少が続く場合、今後革新的な対策方法を導入せずとも、約140 年後には患者はゼロになると言われています。しかし、ハンセン病に対する関心はさらに薄れ、それに伴い予算規模、経験を積んだ専門家も減っていくと予想されるので、4%の減少率を維持することは困難と思われます。今回の会議ではこうした現状を鑑み、4つのテーマが検討されました。
一つ目は、誰でも正確に診断できるELISA(抗原/抗体反応を利用した検査方法)やPCR 法(DNAによる検査方法)を利用した診断法です。
現在、ハンセン病の診断は初期症状である斑紋により行っており、技術と経験が求められます。より簡便で正確な診断法は、制圧に大きく貢献すると期待されます。
二つ目は、菌の多少によらない共通の治療法です。ハンセン病の治療は多剤併用療法(MDT)と呼ばれ、3 種の抗生剤を内服しますが、少菌性と多菌性では、抗生剤の配合と服用期間(6 ~ 12か月)が異なります。共通の治療法(U-MDT)では、同一配合MDTを6か月服用します。菌の多少の区別をする必要が無いので診断を容易にし、服用期間が短くなることで患者の負担軽減が期待されます。
三つ目は、らい菌の感染や感染しても症状発現を防ぐ予防法です。抗生剤リファンピシンの内服やBCG接種による効果が研究されており、今回の会議でも検討されました。
予防法が実現すれば、制圧への貢献は言うまでもありません。
四つ目は、将来避けては通れない薬剤耐性菌出現への対策です。現在のところ、MDT治療への耐性菌の問題は極めて小さいとのことですが、WHOでは耐性菌調査専門家グループを編成し、注意深く観察を続けています。
いずれのテーマも、制圧への貢献が期待されるものでしたが、回復者からは、研究中の予防法が偏見・差別につながる可能性や短い治療期間による治療の確実性への危惧が指摘され、十分なエビデンスを提出するようにとのコメントがされました。今回の検討結果は今年中には公表されるとのことです。