[活動レポート ― ハンセン病]
ハンセン病定着村における環境改善 ミャンマーより

ミャンマー東部の国境付近に位置するシャン州は、独立を求める少数民族が多く暮らし、武装組織との戦闘が多発しており、政治的に不安定な地域です。またアクセスが困難なため医療システムも機能していない地域も多くみられます。ハンセン病の罹患率も高く、州内にはハンセン病定着村も複数ありますが、そこでの生活環境は厳しく、学校さえもありません。これらの状況を改善するために、シャン州の8つのハンセン病定着村において、水タンクの設置や小学校建設などの環境改善活動への支援が2017年に開始されました。この支援はThe Leprosy Mission(TLM:英国救らいミッション)ミャンマー事務所(注1)を通して、シャン州で30年以上もハンセン病関連の活動をしているChristian Leprosy Mission, Eastern Shan(CLEMES:東シャン州キリスト教救らいミッション)(注2)が実施しています。

これらの活動は、各々の村で住民主体が参加型で行うことによって、住民一人一人の自尊心や村への想いを高めるとともに、長年ハンセン病定着村として差別の対象とされてきた村が、周辺の住民たちによって差別されず、「ひとつの村」として認識されるようになることを目的に実施されています。

Le Po(ルポ)村では住民たちが衛生環境を向上するために、まず水タンク建設に協力しました。タンクの土台をつくるために、女性たちもセメント作りに積極的に参加し、一丸となり完成させました。そしてパイプをつなげて水路をつくり、水を村に運べるようになりました。上水道が整備されたことにより、衛生状態が改善し、さまざまな感染症の罹患率も下がることが期待されています。

また、この村は周囲から隔絶した場所にあるため、これまで住民の子どもたちは、学校に通うことができませんでしたが、来年までに小学校が建設されることになりました。ここでの小学校の建設は、これまで子どもたちに教育の機会を与えたいと願っていた親たち、又、将来の夢を描くことができなかった子どもたちにとって、大きな希望となっています。これから将来を担う子どもたちが、学ぶ喜びを得ることにより、いままでは考えられなかったような大きな夢を持つこともできるようになるでしょう。

ミャンマー環境改善

 水タンクをつくるために、セメント作りから住民が取り組みます。
その過程には、女性も積極的に参加し、住民全体の強いオーナーシップが芽生え、
よりよい管理体制も期待されます。

ミャンマー環境改善2

 学校建設予定地で、完成を心待ちにしている子どもたち。
校舎の支柱となる木材は、周辺の山々から木を伐採して村へ運んできました。

注1:The Leprosy Mission(TLM:英国救らいミッション)は、英国を本拠地に130年以上もハンセン病関連の活動を行っているキリスト教団体で、ミャンマーでは1898年より地元のキリスト教団体や病院と一緒に活動を行っています。現在、TLMはミャンマーではハンセン病と障がい者問題のリーダー的な存在です。主に保健サービスや公共の場へハンセン病患者や障がい者がアクセスしやすいようにしたり、偏見差別をなくし、ハンセン病患者や障がい者の社会参加を促したりする活動を行っています。
The Leprosy Missionのホームページ

注2:Christian Leprosy Mission, Eastern Shan(CLEMES:東シャン州キリスト教救らいミッション)は、シャン州の少数民族が多い地域でキリスト教会によって30年前からハンセン病や貧困と立ち向かうことを目的に活動が開始され、現在では医療アシスタント、患者の潰瘍の処置をはじめ、重力フロー給水、バイオサンドフィルター、衛生設備、小学校建設などの社会インフラにかかる活動も行っています。

[活動レポート ― ハンセン病]
ハンセン病定着村における環境改善 インドネシアより

学生などの青年がハンセン病定着村に数週間暮らしながら(キャンプ)、村の清掃活動や道路整備などの環境改善活動(ワーク)を行うことをワークキャンプと呼んでいます。住民である回復者と交流を重ねることを通じて、青年自身の心身の向上にもつながっていると、現地ならびに国内でも高い評価が寄せられています。

 

ワークキャンプ運営団体Leprosy Care Community(LCC)注1は、東ジャワ州ンガンゲット村で活動を行っています。インドネシアでは、ハンセン病患者や回復者、その家族への偏見・差別が、未だに根強く、深刻な問題となっているため、ハンセン病定着村におけるワークキャンプ活動は、インフラ整備による生活環境の改善だけでなく、村の中と外の一般社会をつなぐ架け橋にもなっています。

 

回復者の家族、特に子どもたちは、進学や就職などの理由により、村を出た後、戻らないことが多くあります。そのため、村には高齢者のみが残り、村の発展が期待できないという状況が多くの定着村に共通してみられます。ンガンゲット村も例外でなく、回復者の子どもたちは、村を「故郷」と考えず、都会へ出て働きたいという希望が多くありました。そこで、LCCは、村の住民と村の将来像を描くことから始めました。若者を中心とした集会を開き、清掃活動を行うと共に、村の中に湧いている温泉にも注目しました。温泉周辺の環境整備を行ったところ、村の外からの利用者が増えました。

温泉に続く道に手すりを付け、歩きやすくなりました

温泉に続く道に手すりを付け、歩きやすくなりました

 

建設した更衣室は、村の外からの利用者に好評です

建設した更衣室は、村の外からの利用者に好評です

そこで、2017年度は、温泉をより多くの人々が利用するようになるために、温泉へ続く道の舗装と更衣室の建設を行いました。その結果、ンガンゲット村がハンセン病定着村であることを気にせず温泉を利用する人が多くなり、温泉の駐車料金などの支払いを通じて、村の収入が増え、村の中でも働く機会を得られるようになりました。いま、若者たちは、温泉施設への注目を通して、村への「故郷」としての誇りが生まれ、自分たちの手で、村の将来をどうするか、考え始めています。今後のンガンゲット村の発展が大きく期待されます。

 

 

 

 

注1:

Leprosy Care Community (LCC) は、2010年の設立以来、年々活動範囲を拡げ現在では4か所でワークキャンプが実施されています。

http://www.lccui.com/

インドネシアでは2018年度に、こうした各地のワークキャンプをコーディネートする組織として「JALAN Indonesia Work Camp CoordinateCenter」が立ち上がりました。

 

[活動レポート ― ハンセン病]
インドネシアの新・ハンセン病サービス提供システム

インドネシアは、世界で3 番目に患者の多い国で、現在でも年間約17,000人がハンセン病と診断されています。社会における偏見差別も根強く、医療面・社会面双方の問題が大きく残るこの国では、病気の早期発見、診断・治療、障がい予防、障がい悪化予防、社会経済的リハビリテーションといった一連のハンセン病サービスがこれからも必要とされています。そこで、当財団は、2014 年からソロCBR開発センターと協力して、蔓延県の一つである中部ジャワ州ブレべス県を対象に、これらのサービスが維持される社会の仕組み作りを行っています。

奨学金支給枠の拡大が約された県教育部門共催ハンセン病と障がい者インクルーシブワークショップに参加者した学校や父母会の代表たち。

奨学金支給枠の拡大が約された県教育部門共催ハンセン病と障がい者インクルーシブワークショップに参加者した学校や父母会の代表たち。

患者数の減少によりハンセン病対策への政府予算が縮小される中、ハンセン病当事者が必要とするサービスにアクセスできるようにするために着目したのは、保健や教育、労働、福祉等の一般行政サービスです。これらを、ハンセン病患者・回復者も享受でき、また、ハンセン病患者・回復者のニーズに適うように提供されることが目標です。ハンセン病とその他の障がいを持つ人の問題と合わせて県行政に働きかけて、その行政機構の中に「ハンセン病と障がいのためのフォーラム」を設置しました。このフォーラムは、ハンセン病と障がいを、「分野横断テーマ(教育や福祉などすべての行政部門で考慮すべき問題)」とみなし、各部門の代表と関係民間団体の代表、ハンセン病と障がいの当事者代表から構成され、四半期に一度会合をもちます。
女性グループや教職員組合などのコミュニティリーダーが参加した県保健部門共催ハンセン病早期発見トレーニングの様子

女性グループや教職員組合などのコミュニティリーダーが参加した県保健部門共催ハンセン病早期発見トレーニングの様子。


この会合で、当事者から直面している問題や必要とされるサービス等が発表され、各行政部門はこれらに対して、どのような支援やサービスを提供しうるか考え、提案されます。こうして、年度内予算で対応可能なものは今年度中に、予算内で実現が難しいものについては翌年度に予算建てすることも検討され、着実に実施されています。これまでに、教育機会の拡大や病気の早期発見の推進など、ニーズに適った数多くの多様なサービスが実現されています。この行政におけるフォーラムの形成は、持続可能なハンセン病サービス提供システムとして、さらなる発展が期待されています!

[活動レポート ― ハンセン病]
活動レポート

過去の記事は、以下のページでご覧いただけます。
 ハンセン病
 ホスピス緩和ケア
 公衆衛生の向上

[活動レポート ― ハンセン病]
ハンセン病対策活動への回復者参加を強化する臨時専門家グループ会議開催

病気を経験した人は、その病気の症状や、治療法、治癒後の注意点を知っています。ハンセン病から回復した人も、その経験から得られた知識と知恵を活かし、新たにハンセン病に罹った人や治癒した人のケアやサポートをすることで、ハンセン病対策に参加し始めています。
世界保健機関は、ハンセン病回復者の経験を今後のハンセン病対策活動に活かしてもらうため、2011年に、「ハンセン病対策活動に回復者の参加を強化するためのガイドライン」を発行しました。4年が経過し、世界中で回復者の参加が進んでいます。しかし、参加が実現するまでの経過、参加中の問題点や対応策、参加が対策活動や回復者にもたらすインパクトなどの情報が、草の根レベルの医療従事者や回復者の間で広くシェアされておらず、これから参加を進めたい、もっと強化したいと思っている人たちに役立つ情報手段が不足しています。世界ハンセン病団体連合(ILEP)のメンバーである当財団は、2014 年4月から、ILEP 技術委員会の承認の下、回復者の参加強化を考えるために7人のメンバーからなる臨時専門家グループ(TEG)を編成し、そのコーディネーターを務めています。7名のうち1名は、インドネシアの若い女性の回復者です。2014 年4月にインドネシアで開催した第1回会議に続く第2回会議を、4月27日と28日の2日間、中国広東省広州市で開催しました。会議直前の4月25日に発生した巨大地震で欠席を余儀なくされた、ネパールからの参加者(回復者2名と専門家1名)を除く29 名(専門家、回復者、通訳、事務局担当者を含む)が、本会議に参加しました。今回の会議の主目的は、草の根レベルでハンセン病対策活動をする医療従事者や回復者が手軽に使える、回復者参加の活動事例を収集したハンドブックを制作することです。実際に活動に参加している中国、インドネシア、インド、エチオピアからの回復者6名(男女各3名)が、活動参加の動機、活動内容、直面している/した問題と解決法、役立ったサポート、生活の変化などをシェアしてくれました。その後2グループに分かれ、活動参加が、回復者自身と対策活動にどのようなインパクトを与えたかを、深く議論しました。

グループディスカッションの様子

グループディスカッションの様子

対策活動参加に伴う経験や思いには、国による違いが少なくありません。しかし、活動参加への動機としては、周囲に良き理解者や指導者が居たという点、家族を説得し理解を得るのは困難だったという点、また、参加を通じて自信と自尊の気持ちが得られた点は、ほぼ全員が挙げていました。2日目の午後、6名の回復者は広州市内のハンセン病定着村を訪問し、中国の回復者との交流を持ちました。一方、TEG メンバーは、今回の回復者からの聞き取りと議論を通じて得られたことを元にした事例収集を含み、今後の作業計画を検討しました。本TEGの作業による成果物は、2016 年9月に中国で開催予定の、第19回世界ハンセン病会議で発表と報告をする予定です。
会場、華金盾大酒店(Wa King Town Hotel)のロビーで集合写真

会場、華金盾大酒店(Wa King Town Hotel)のロビーで集合写真